賃貸でベランダ柵を付ける前に、管理会社が確認する項目

目次
  1. 決める人を三つに分けてから、質問を作る
  2. 電話ではなく、日付と相手の名前が残る形で
  3. 退去立会いで見られるのは、柵の出来ではない
  4. 柵の外側にも、まだ仕事が残っている
  5. 断られたときの逃げ道を、先に用意しておく
  6. 聞き方を変えると、答えが変わる

賃貸のベランダに柵を付けてよいかを決めるのは入居者ではなく、契約書と管理会社(貸主)です。だから最初にやることは道具を選ぶことではなく、管理会社に「共用部分に設置を認めるか」「退去のときに何を基準に確認するか」を書面で問い合わせ、返答を残すことになります。突っ張り式で跡が残らないから大丈夫、というのは入居者側の理屈で、設置の可否を決める根拠にはなりません。

うちのベランダは、手すりの内側に物干しの金具が付いていて、床はコンクリート、奥にエアコンの室外機が一台。扉を開けると、網戸のレールに砂が溜まっているのが見えます。猫が窓辺で外を眺めるようになってから、この扉を開けるたびに、網戸とサッシのあいだの数センチが妙に気になりはじめました。網戸は全開にすると戸袋にすっぽり納まる。開けっ放しにすれば、その隙間は猫の肩が通る幅になる。

まず机の上に書類を全部広げました。賃貸借契約書、重要事項説明書、入居時の室内確認表、管理会社からもらった生活の手引き。ペットの条項は「飼育不可」か「猫○匹まで、ただし…」のどちらかで、後者にはたいてい飼育場所の限定が添えてあります。うちのは後者で、頭数、共用部分に出さないこと、ベランダに常時出したままにしないこと、といった行が並んでいました。読んでいて思ったのは、ペット可の物件でも、ベランダが猫のための自由な空間として書かれているわけではない、ということです。

決める人を三つに分けてから、質問を作る

電話をかける前に、紙の真ん中に縦線を一本引いて、左に「契約と管理会社が決めること」、右に「私が決めること」と書きました。大げさな作業に見えますが、これをやらないと質問がぼやけます。

左に来るのは、そもそも設置してよいか、どこに付けてよいか、退去のときに外すのか残すのか、原状回復の対象になるのか、費用はどちらが持つのか。ベランダは建物の一部で、多くの場合、専用使用権が認められた共用部分です。手すりに結束バンドを通す、サッシにビスを打つ、といった工作の可否は、借りている側の判断だけでは閉じません。分譲マンションの一室を借りているなら、貸主や管理会社とは別に管理組合の使用細則が効いていることもあるので、そこも確認の候補に入れておきます。

右に残るのは、道具の選び方、設置の仕方、日々どう使うか。突っ張りポールや自立式のパネルが選ばれるのは、穴をあけないからです。ただし「穴をあけない」は原状回復の負担を軽くする話であって、設置してよいかどうかの答えではありません。ここを一続きに考えてしまうと、あとで「聞いていなかった」という話になります。

電話ではなく、日付と相手の名前が残る形で

管理会社には電話ではなくメールで送りました。口頭のやりとりだと、退去の日に「そういう話は聞いていない」になりうるからです。問い合わせフォームでも構わない。要は残る形にすること。送ったのは、だいたい次のような並びです。

  • ベランダに猫の脱走防止用の柵を置きたい。貸主の許可が必要か、届出で足りるか。
  • 設置してよい範囲は手すりの内側か、手すり本体への固定は可か。
  • 退去のときは外す前提か、残す前提か。確認は何を見て行うのか。
  • 室外機の点検スペース、排水口、避難はしごの降り口をふさがなければ、それで足りるか。
  • 工事を伴わない市販品を自分で置く場合も、事前の届出は要るか。

返ってきた答えは、可か不可かの二択ではありませんでした。手すりへの固定は不可、床置きで倒れない形なら可、退去時は撤去して写真を出す——そのくらいの粒度で返ってくる、というのが私の実感です。私はその返信を印刷して、契約書と同じクリアファイルに入れました。これが、この話でいちばん大事な半分です。

退去立会いで見られるのは、柵の出来ではない

設置した日、脚立を出してベランダに立ち、同じ画角で三枚撮りました。手すりの高さがわかるようにメジャーを当てた一枚。室外機との距離がわかる一枚。扉を全開にして、隙間がどう塞がっているかがわかる一枚。きれいに見せるためではなく、置く前と置いた後を、退去の日に双方が思い出せるようにするためです。

スマホのアルバムに「ベランダ設置日」というフォルダを作り、日付を入れました。撤去した日も同じフォルダに入れる。それだけのことで、立会いの日の会話は「言った・言わない」から「これですね」に変わります。逆に写真がないと、たとえ許可を取っていても、その場で口で説明するしかなくなります。柵の出来の良し悪しを評価されるわけではない、というのは、この順番を踏んでから腑に落ちました。

柵の外側にも、まだ仕事が残っている

ペットの条項は、設置の話だけではなく、他の住民に迷惑をかけないことも求めています。共用の廊下、階段、エントランス。ベランダに柵を立てても、玄関を開けた瞬間に猫が廊下へ出てしまえば、同じ条項の別の部分が崩れます。うちは玄関の内側に低い突っ張り式のゲートを置き、靴を履くときは猫を奥の部屋へ移す、と決めました。来客のときはたたきにケージを出します。

柵は一箇所で終わる話ではない。これは、しばらく暮らしてから残った実感です。ベランダの対策だけを完璧にしても、玄関と窓が開いていれば同じことになります。

断られたときの逃げ道を、先に用意しておく

許可が出ないこともあります。そのときに慌てないよう、聞く前から代わりの手を考えておきました。網戸のストッパー、窓の開閉制限、網戸用のロック、ベランダに出さない運用。来客のときだけ置くとしても、設置そのものに許可が要るかは別の質問になります。ここも、思いつきで決めずに聞いておくほうが安全です。

聞き方を変えると、答えが変わる

いちばん効いたのは、質問の形を変えたことでした。「柵を付けていいですか」ではなく、「退去の日、そちらは何を見て、何を基準に判断しますか」。この聞き方だと、返ってくる答えが基準の話になります。基準がわかれば、道具も、固定の方法も、写真の撮り方も、そこに寄せていけます。

今、ベランダの扉を開けると、柵の向こうに室外機、その向こうに隣の棟の壁。猫は柵の内側で、網戸越しにこちらを見ています。クリアファイルには契約書、返信メールの印刷、設置日の写真。退去はまだ先ですが、この三つが揃っていれば、たぶん大丈夫だと、そう思っています。

猫の爪痕

執筆者について

猫の爪痕

猫と暮らす年月が長くなり、爪とぎの跡や換毛期の抜け毛が部屋の景色に溶け込んでしまった人たちです。多頭飼い、引っ越し、シニア猫との暮らしをそれぞれに経験しながら、猫種ごとの性格や手入れの重さを日々の暮らしの中で見てきました。

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