スコティッシュフォールドを迎えるなら、耳の折れ方より先に、その耳が何の表れなのかを知っておくほうがいい。折れ耳は見た目の飾りではなく、全身の軟骨に関わる遺伝子が外から見える形で出たものだとされる。だから準備する中身は、他の短毛種と似ているようで少し違ってくる。床の材質、段差の数、体重の管理、爪切りの習慣、そして迎える前に確認しておきたい登録団体の考え方。耳の形から逆にたどっていくと、やることが見えてくる。耳だけで選ぶと、あとから「思っていたのと違う」が始まる。

膝の上で耳を触った日
うちに来て三日目の夜、畳に座った私の膝の上に、その小さな体は乗ってきた。指の腹で耳をなぞると、折り返したやわらかい部分の奥に、細い芯のような硬さがある。テレビの音を消すと、部屋にはエアコンの風と、その子の小さい寝息だけが残った。そのとき私が考えていたのは、かわいいということではなく、この耳の形が体のどこまで続いているのか、ということだった。
迎える前の私は、正直に言えば耳しか見ていなかった。写真を何十枚も見て、折れ方の角度まで比べていた。今思えば順番が逆で、先に決めるべきだったのは部屋のほうだった。
折れ耳は、耳だけの話ではない
スコティッシュフォールドの始まりは、1961年、スコットランドの農場にいたスージーという名の猫だとされる。この猫の耳が自然に前に折れていたことが起点になり、その形が受け継がれてきた。折れ耳を生む遺伝子は不完全優性で、しかも軟骨全体に影響するとされる。耳の軟骨が折れているのは、その影響の一部が外から見えているというだけのことだ。
だから海外の主要な登録団体では、扱いが分かれている。折れ耳どうしの交配を避ける規定を置いているところもあれば、そもそもこの猫を登録の対象にしていないところもある。日本で見かける個体の多くは、丸い顔と落ち着いた気質を引き継ぐために、ブリティッシュショートヘアなどとの交配を経ている、という説明を聞くことが多い。つまり「折れ耳の猫」は、単独で固定された一つの型というより、血の組み合わせの上に成り立っている。
毛の長さでも分かれる。短毛のスコティッシュフォールドと、長毛のハイランドフォールド。長毛のほうは見た目の柔らかさが増す代わりに、ブラッシングの回数がそのまま増える。ここは部屋の広さの話ではなく、毎日どれだけ手をかけられるかの話になる。
穏やかさは、放っておくと体重になる
性格は、総じて穏やかで人懐こい。声は小さめで、要求鳴きが激しくない。遊びも、激しく走り回るタイプではなく、じゃらしを目で追って、時々手を出す程度のことが多い。集合住宅、とくに隣室との距離が近いマンションでは、この静かさは実際に助かる。私の住む部屋でも、壁の向こうに響くような鳴き声はほとんど聞いたことがない。
ただ、ここに落とし穴がある。大人しく、動かない。動かないから、太る。そして体重は、軟骨に直接のしかかる。
うちでごはんの量を測るようになったのは、かわいそうだからではなく、床を走らせたときの音が変わったからだった。着地の音が少し重くなったな、と気づいた時点で、遊びの回数を先に増やし、フードの量は後から調整した。順番はこれでよかったと思っている。痩せさせるより、太らせないほうがはるかに楽だ。
床と段差は、迎える前に決めておく
日本の住まいで最初に悩むのは、畳かフローリングかだ。畳は滑りにくく、着地の衝撃をいくらか受け止めてくれる。その代わり、爪とぎの被害は集中しやすい。フローリングは掃除が楽で毛も取りやすいが、滑る。走って曲がるときに、足が流れる。
私の結論は、どちらかに寄せるのではなく、滑るところにだけ敷く、だった。廊下と、ソファやテレビ台の前に、滑りにくいマットを置く。全部を絨毯にする必要はない。助走をつける場所と、着地する場所だけを押さえれば、かなり変わる。
段差も同じ発想で考える。キャットタワーを買うときは、高さより段の間隔を見るようにした。飛び上がるより、歩いて上がれるタワーのほうが、結果的に長く使ってくれる。ソファの前に小さなスツールを置いて中継地点にする。長毛のハイランドフォールドや、シニア期に入った個体を考えるなら、スロープを一つ用意しておくと後悔が少ない。
爪切りと爪とぎも、ここに並ぶ。爪切りは短毛種でも欠かせない習慣で、頻度は爪の伸び方で決めればいい。爪とぎは、ダンボールのものを縦に置くか、畳を守りたいなら爪とぎの場所を窓際に固定してしまうか。うちは後者で、多少の犠牲は受け入れた。
耳そのものの手入れ
折れている耳は、ふさがっている。だから風通しが悪く、汚れがたまりやすいと言われる。私がやっているのは、週に一度、やわらかい布やコットンで、外から見える範囲をそっと拭くだけだ。奥をこすらない。折り返しの内側を無理に開かない。
そして、いつもと違う様子があれば、その日のうちに動物病院の予約を取る。耳のことを自分で判断しない、と決めてから、私はむしろ気が楽になった。判断を手放すのは、投げ出すこととは違う。
長毛のハイランドフォールドなら、これにブラッシングが加わる。短毛でも換毛期はそれなりに抜けるが、長毛は毛玉になる前にほぐす必要がある。週に何回、と決めるより、首の後ろと脇の下を触って、引っかかりを感じたらその日にやる、という決め方のほうが続いた。
迎える前に、聞いておきたいこと
猫そのものと同じくらい、私は「この耳についてどう説明するか」を見るようにしている。折れ耳の遺伝の話、交配の組み合わせ、登録団体による扱いの違い。それを面と向かって話せる相手かどうか。耳の形だけを売り文句にして、体の話をしない相手なら、そこで一度立ち止まる。
子猫の耳は、生まれたときから折れているわけではない。生後数週間のうちに折れてくる、という話を聞く。逆に、折れが浅いまま育つ個体もいる。つまり、写真で見た耳が、そのまま大人の耳になるとは限らない。耳で選ぶことは、実はできない。これは迎える前に知っておいて損のない事実だと思う。
それでも、耳が好きだという気持ちは置いていかない
ここまで読むと、耳をあきらめろと言っているように聞こえるかもしれない。そうではない。あの折れた耳が、寝ているときにわずかに動くのを見ている時間は、私にとってこの猫と暮らす理由の一つになっている。ただ、順番の話をしている。耳を好きなままで、床を敷き、段差を減らし、体重を測り、登録の話を聞く。それを先にやっておくと、耳のかわいさを、後ろめたさなしに眺めていられる。