よく鳴く猫は猫種で決まる?静かな猫との違いを傾向として比較する

目次
  1. 説明書きの「静か」は、たいてい音量の話をしている
  2. 鳴く側に集まる猫、静かな側に置かれる猫
  3. 声の量は、暮らし方でも動く
  4. 迎える前に聞けることは、品種名より細かい

よく鳴くかどうかは、猫種だけでは決まらない。猫種が示すのは、鳴き声の量と質がどのあたりに集まりやすいかという傾向で、同じ品種の中の個体差は、その傾向の幅より大きいことが多い。だから品種を選ぶときに見ておきたいのは「鳴く種か、静かな種か」ではなく、その声が誰に向かって、何を動かそうとして出ているのかという点になる。

私がこの見方に落ち着いたのは、友人の部屋で2匹を同時に眺めていた夜のことだ。夜の10時を回った六畳間に、私は皿を拭きながら座っていた。片方はシャムの血が入った細身の猫で、台所にいる友人と私の間を行き来しながら、短くて高い声を繰り返していた。もう片方は青灰色のずんぐりした猫で、ソファの肘掛けに腰を下ろし、私の顔を見て、しっぽの先だけを一度跳ね上げた。声は出していない。

ところが、静かなほうが「何かくれ」と言っているのは明らかだった。目線が皿に落ち、耳が私のほうを向き、跳ね上げたしっぽがゆっくり戻っていく。私は30秒ほど知らん顔をして、それから立ち上がった。青灰色の猫は一声も発さずに餌の前に着いた。声を出していた猫のほうは、私が動いた瞬間にぴたりとやめた。伝わったからだ。

この夜から、私は「鳴く猫/鳴かない猫」をスイッチのように見るのをやめた。声はいくつもある伝達のチャンネルのひとつで、鳴かない猫は黙っているのではなく、別のチャンネルを太く使っているだけだ。そしてチャンネルの太さは、その猫が人間との間でどんな役割を担ってきたかの歴史と、体のつくりに、ゆるく紐づいている。ゆるく、というのは大事で、鎖ではない。

説明書きの「静か」は、たいてい音量の話をしている

猫種の紹介を読んでいると、「鳴き声が少ない」「あまり鳴かない」という言葉がよく出てくる。ただ、その言葉が指しているのは回数ではなく、音量か、鳴く場面の限定であることが多い。ロシアンブルーは静かな猫として紹介されるが、一緒に暮らしている人に聞くと、その人にだけはよく話すという。来客のときは黙っている。つまり無差別には鳴かないという意味であって、家族に無関心という意味ではない。

集合住宅で気になるのは、回数より「通り方」だ。壁の向こうに届くのは、鳴いた回数ではなく、声の高さと倍音と、鳴き続ける長さになる。低く短い声は隣に届きにくい。高いところに集まった倍音の多い声は、ドアの隙間から廊下へ抜けていく。私が以前住んでいた部屋は、玄関の隙間から下の階の物音が入ってくるような部屋だった。あの頃、夜中に長く伸ばす猫の声は、回数が少なくてもよく響いた。逆に、昼の間に何度も短く鳴く猫は、扉を閉めてしまえばほとんど気にならなかった。同じ「よく鳴く」でも、質が違えば生活への入り方も違う。

鳴く側に集まる猫、静かな側に置かれる猫

シャム、オリエンタルショートヘア、バーミーズといったアジア系と呼ばれるグループは、よく鳴く側に集まりやすい。共通しているのは、人と向き合うために改良されてきた歴史だ。声は「ここにいる」「こっちを見て」という方向を持っていて、用がなくても発せられる。こちらの返事を待つように間を置くこともある。声そのものが大きいので、同じ回数でも印象に残りやすい。

バーミーズは、その中では声が少し丸い。シャム系ほど甲高くないぶん、家の中では耳に刺さりにくい。ただし量は多い。静かさを求めてこのグループを避けるなら、避けているのは音量ではなく頻度のほうだ、ということは覚えておいたほうがいい。

日本のジャパニーズボブテイルは、社交的で、人によく話しかける猫として知られる。ただ、その声は遠くへ届かせるための声ではない。短く転がるような音で、部屋の中に収まる。この猫と暮らした経験のある人からよく聞くのは、鳴き声より、しっぽを一本の棒のように立てて廊下の向こうから近づいてくる姿のほうだ。足元で一声。あの一声は、情報の大半を姿勢のほうが担っている。

静かな側に置かれるのは、ブリティッシュショートヘア、ロシアンブルー、ノルウェージャンフォレストキャットなどだ。よく言われる由来は、人間のそばで暮らしながらも、単独で過ごす時間の長い働き方をしてきた、というもの。声を張り上げる必要のない暮らしだ。彼らは声の代わりに、視線、耳の角度、しっぽ、体の向きでかなり細かいことまで伝えてくる。受け取る側の慣れが要る。慣れないと、静かな猫は「何も言わない猫」に見えてしまう。

声の量は、暮らし方でも動く

同じ猫でも、環境で変わる。子猫のころに人と過ごした時間が長かったかどうか。毎日決まった時間にごはんが出るか。鳴けば扉が開くのか、開かないのか。猫は無駄なことを続けない。鳴いて結果が出れば鳴くようになり、出なければ別の手段に切り替える。だから「静かな品種」を迎えた家でも、夜中に一度鳴いて扉が開いてしまえば、その家の猫はもう静かではない。品種の傾向より、その場の学習のほうが手前に来る。

引っ越しや家族構成の変化も効く。慣れない部屋で数日よく鳴く猫は多いが、それは品種の声ではなく、状況の声だ。落ち着くにつれて減っていくこともあれば、安心したとたんに話し始めることもある。順番は猫によって違う。

迎える前に聞けることは、品種名より細かい

品種の傾向は出発点で、答えではない。大人の猫を見せてもらえる場では、次のことを聞いてみるとよい。この子は一日のうち、いつ、誰に向かって鳴くのか。ごはんの前か、扉の前か、それとも用もなく横に来て鳴くのか。声はどのくらい通るか。知らない人が来たときはどうか。これらは品種名よりずっと具体的で、その猫の実際の姿に近い。

子猫の声はまだ決まっていない。成猫の声はもう出来上がっている。だから静かな暮らしを望むなら、子猫の見た目より、成猫の振る舞いを見たほうが確かだ。ただし、それでも外れる。譲渡の場で静かだった猫が、家に慣れてからよく話すようになるのは珍しくない。安心したから声が出る、という順番もある。

結局、私が知りたいのは、この猫が何を言おうとしているのかであって、品種名ではない。声の大きい猫と暮らすと、生活は確かに音で変わる。朝は起こされるし、電話の最中に話しかけられる。それでも、声を出さない猫の合図を読み損ねて、じっと見られていることに気づかないまま一日が終わるよりは、と私は思っている。どちらが良いという話ではなく、どのチャンネルで会話するかという話だ。

猫の爪痕

執筆者について

猫の爪痕

猫と暮らす年月が長くなり、爪とぎの跡や換毛期の抜け毛が部屋の景色に溶け込んでしまった人たちです。多頭飼い、引っ越し、シニア猫との暮らしをそれぞれに経験しながら、猫種ごとの性格や手入れの重さを日々の暮らしの中で見てきました。

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