爪切りやブラッシング、子供に任せて失敗する前に決める線引き

目次
  1. 爪切りで子供が渡されるのは、足ではなくおやつ
  2. ブラシを渡せるかどうかは、被毛の長さで先に決まる
  3. キャリーは、出かける日に出すものではない
  4. 猫が立ち上がったら、その日は終わり
  5. 段階は、行き来しながら上がる
  6. 失敗のサインは、猫より先に子供に出る
  7. 何か月かかるかは、猫のほうが決める

爪切りは大人が猫を支えて行い、子供はおやつを持つ。ブラッシングは、猫がいつでも歩き出せる体勢のまま、大人が隣に座って手を添え、子供へ少しずつ渡していく。この二つを同じ日に同じ調子で始めると、たいてい数週間で止まる。任せる線引きは子供の年齢で決めるものではなく、「誰が猫の体に触れ、誰がタイミングを取るか」を段階ごとに分けて、何か月もかけて動かしていくものだ。

爪切りやブラッシング、子供に任せて失敗する前に決める線引き

リビングのカーペットの上で、私は猫を膝にのせ、爪切りを手に取った。子供が「持ちたい」と言うので、前足を持たせてみた。猫が小さく引いた瞬間に子供の指へ力が入り、猫が抜けて、床に転がっていたおやつを食べた。引いたらおやつが出る。その日のうちに、うちの分担は決まった。猫の体を持つのは大人、おやつを持つのは子供。

爪切りで子供が渡されるのは、足ではなくおやつ

爪切りは、大人の仕事として最後まで残る。理由は技術の差ではない。猫の足先は動きが小さく、どこで止めるかを読む必要がある。一方で、おやつを渡す役は「タイミングを取る」だけの仕事で、これは練習で身につく。だからうちでは、子供を猫のすぐ真横には座らせず、少し離れた場所から、猫が動かずにいられた瞬間に、小さく割ったおやつを置く。引いたあとにあげてしまうと、引くことが報酬になる。これは何度も失敗した。

最初のうち、子供はおやつを握ったまま待てない。猫が鳴くと先に手が出る。それでも爪切りの回数は月に数回しかないのだから、この練習はゆっくりでいい。

ブラシを渡せるかどうかは、被毛の長さで先に決まる

短毛種なら、ブラッシングは週に数分で足りる。時間が短いということは、猫が嫌がる前に終われるということでもある。だから短毛種の家では、子供がブラシを持つ日は比較的早く来る。十分な時間を保てるかどうかが、子供に渡せるかどうかの分かれ目になる。

長毛種は話が別だ。ほぼ毎日、しかも一箇所ずつ丁寧に見ていく必要がある。長い時間ブラシを当てることになるので、途中で猫が立ちたくなる場面が必ず出る。ここを子供に任せると、猫が動いたときに追いかける形になりやすい。だから長毛種の家では、メインは大人が持ち、子供は「猫がいちばん嫌がらない場所」を三十秒だけ担当する、という形から始める。長毛種を迎えた家では、子供が主担当になる日が来ないままでも不思議ではない。来ないなら来ないで、それが普通だと思っている。

キャリーは、出かける日に出すものではない

キャリーは普段から部屋の隅に開けて置く。うちでは蓋を折り返したまま、中にタオルを一枚敷いてある。猫は昼寝に使うこともあれば、数日まったく無視することもある。それでいい。大事なのは、キャリーが出てきた日は「どこかへ行く日」ではないと猫が知っていることだ。

子供の役割は、その中に自分の使わなくなったタオルを入れること。あるいは、ただ跨いで通り過ぎること。出かける朝にキャリーを揺らして猫を誘うのは、大人でも失敗する。学校の行事の前にキャリーを出して、そのあと猫が二日ほど部屋の隅で小さくなっていたことがあった。原因は移動ではなく、前日にキャリーが「出てきた」ことだった。

猫が立ち上がったら、その日は終わり

ブラッシングは、長く一回やるより、短く何回もやるほうが残る。猫が立ち上がったら、その時点で終わりにする。引き留めない。これを繰り返すと、猫は「逃げれば終わる」ではなく「逃げる前に終わる」を覚える。うちの猫は途中で尻尾を振って知らせてくるようになった。

このとき、子供に守らせたいのは「止める」ほうの技術だ。大人が「終わり」と言ったら、ブラシをすぐ床に置く。あと一回だけ、はしない。あと一回を許すと、子供の手は止まらない手になる。止まる手だと分かれば、猫はその手を怖がらない。

段階は、行き来しながら上がる

目安として、うちではこんな順番で動いた。

  • 大人が全部やる。子供は二歩後ろで見る。おやつも大人が渡す。
  • 子供がおやつを持つ。猫の体には触れない。
  • 子供が手のひらで、背中を一度だけ撫でる。ブラシはまだ持たない。
  • 子供がブラシを持ち、猫の体にはつけずに、空中で一度だけ動かす。
  • 大人の手が猫の背中にあり、その上から子供の手が動く。
  • 子供がブラシを持つ。大人は同じ部屋にいるが、手は出さない。

一つ進むのに数週間かかる。爪切りだけは、この順番の外にある。子供が猫を持つ段階は飛ばしていい。飛ばしたほうがいい。

失敗のサインは、猫より先に子供に出る

子供が危ないときは、猫が暴れる前に分かる。息を止める。前のめりになる。左手が猫の首のほうへ寄る。ブラシを持つ手が、猫の体に沿わずに浮く。このどれかが出たら、大人は静かに「代わるね」と言って受け取る。怒らない。引き継ぎを罰にすると、子供は次の回にサインを隠すようになる。隠されたサインが、いちばん困る。

何か月かかるかは、猫のほうが決める

落ち着いた短毛種で、じっとしていられる子なら、ブラシだけは一、二か月で渡せることがある。逆に、長毛種で警戒の強い猫と、まだ四、五歳の子の組み合わせなら、その子の役割は何年も「おやつを持つ人」と「キャリーにタオルを入れる人」のままでいい。役割が小さいことは、失敗ではない。

線引きは「大人の仕事」と「子供の仕事」の間に引くものではない、と思っている。爪切りという一つの作業のなかに、猫を支える部分と、おやつを渡す部分があって、その内側に線を引く。ブラッシングも同じで、ブラシを持つ人、止める人、猫が逃げられる空間を保つ人がいる。同じ作業のなかに、いくつもの持ち場がある。

うちで今も変わらないのは、爪切りのとき子供がおやつを持っていることだ。猫は爪切りを嫌がらない。正確には、終わったあとに何かもらえる時間として覚えている。役割を分けたのは、猫のためでも、子供のためでもなく、たぶんその両方だった。

猫の爪痕

執筆者について

猫の爪痕

猫と暮らす年月が長くなり、爪とぎの跡や換毛期の抜け毛が部屋の景色に溶け込んでしまった人たちです。多頭飼い、引っ越し、シニア猫との暮らしをそれぞれに経験しながら、猫種ごとの性格や手入れの重さを日々の暮らしの中で見てきました。

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