「猫の数より1つ多く」は、トイレにも爪とぎにも当てはまる。猫が2匹いる家なら、トイレは3か所、爪とぎも3か所が起点になる。ただし、増やした1つをどこに置くかは買い物の問題ではなく間取りの問題だ。猫が子供の走る廊下を横切らずにたどり着けること、爪とぎが猫のすでに寝ている場所の隣に立っていること、そして子供がぶつかっても動かない重さであること。この3点が、数を増やすことと同じくらい結果を左右する。
最初に1つ増やした日のことを、いまでも覚えている。夕方6時、リビングの床はプラレールとぬいぐるみで埋まっていて、その真ん中に立って、買ってきたばかりのトイレの置き場所を探していた。洗面所の奥が空いていたので、そこに置いた。部屋は整った。けれど、そこへ行くには子供が走り回る廊下を横切らなければならない。しばらくして、そのトイレはほとんど使われていないことに気づいた。掃除のたびに、砂の山が崩れていないのだ。使われた形跡のない砂は、きれいすぎる。
それからは、置き場所を決めるときに必ずしゃがむようにした。床に座って、猫の目の高さで部屋を見る。廊下の先、ソファの影、子供の三輪車。猫はトイレから出るとき、出た先に何があるかを確かめる。フタ付きは入口がひとつしかないので、出た瞬間はまだ体の半分が中にあり、前が見えていない。だからフタの有無より先に、入口の前に体ひとつぶんの余白があるかどうかを見る。
数を数えるのは一瞬で、詰まるのは床
猫2匹、子供2人、3LDK。トイレ3つ、爪とぎ3か所。数えるのは一瞬で終わる。詰まるのは床だ。子供の遊ぶスペース、洗濯物のカゴ、空気清浄機、本棚。そこに3つずつ足すことになる。だから最初に決めるのは「どこに置くか」ではなく「どこなら猫が横切らずに行けるか」になる。
廊下は、子供が走る場所としては最高で、猫にとっては最悪だ。走る足音と、曲がり角から急に現れる体。猫はそれを見て「今は通れない」と判断する。猫が落ち着いて用を足せるかどうかは、通り道の静けさでかなり決まる。だからトイレは、家の中心から少し外れた、それでいて家族の気配が届く場所に落ちる。リビングの窓際、寝室の入口の脇、廊下の突き当たりの手前。うちで最終的に使われたのは、そういう場所だった。
フタは「見た目」と「見える」を交換する
リビングにトイレを置くと、来客の目に入る。だからフタ付きにしたくなる。私もそうした。けれどフタは、猫の視界を半分にする。中にいるあいだ、外で何が起きているかが分からない。
だからフタを選ぶなら、置き場所でそれを補う。入口を壁にぴたりと向けず、少し斜めにして、出た先がすぐ廊下にならないようにする。反対に、フタなしでリビングの中央に置けばいいという話でもない。要は順番で、フタは最後に決める。場所が先だ。隠すことから入ると、猫が行かない場所にきれいなトイレが並ぶことになる。
爪とぎは、猫が寝ている場所の隣に立つ
爪とぎは、家族が「ここで研いでほしい」と思う場所ではなく、猫がすでに寝ている場所の隣に立つ。ソファの端で丸くなっているなら、その肘掛けの横。日向のカーペットで伸びているなら、その窓際。壁の角に爪の跡がついているなら、そこが答えだ。跡は、猫がすでに選んだ場所の記録で、私はいつもその跡から置き場所を決める。
高さは、猫が立ち上がって前足を伸ばしきったときに、てっぺんまで届くかどうか。人間の膝の高さでは足りない。うちで最初に買った爪とぎは、伸びをすると天辺で手が止まり、そのうち使われなくなった。
そして安定。これは子供がいると効いてくる。子供は爪とぎにぶつかる。寄りかかる。倒れそうになって、とっさに掴む。そのたびに揺れる爪とぎを、猫は使わなくなる。揺れないことは、見た目より先だ。ぐらつくなら壁際に寄せる、滑り止めを敷く、下に重いものを置く。それでもだめなら、その爪とぎは猫の場所ではない。
3か所をどう振り分けるか
私の家では、リビングの寝床の隣、台所へ向かう途中の廊下の壁、寝室の入口の3か所に落ち着いた。廊下のものは、通りかかったときに立って研ぐためのものだ。だから高さより、通り道に面していることが大事だった。家中の爪とぎが全部「遊ぶための場所」に寄っていると、猫は通り道で壁を研ぐことになる。
床に置けないぶんは、上に逃がす
子供が小さい家では、床の面積が足りない。そこで垂直の場所になる。リビングの角にキャットタワーを置くと、猫は家族と同じ部屋にいながら、手の届かない高さにいられる。子供が昼寝をしているあいだも、猫は同じ部屋で寝ている。これが大きい。別の部屋に逃がすと猫は家族から離れる。同じ部屋の上に逃がすと、距離だけが生まれる。
タワーも、安定が先だ。3歳児が寄りかかって揺れるタワーは、猫にとって安心できる場所ではない。天井まで届く突っ張り式は安定しやすいが、置ける角は限られる。賃貸なら、突っ張り跡のことも先に考えておく。
置き直してから分かったこと
使われなかった洗面所のトイレは、リビングの窓際、猫が昼寝をしているラグの端に移した。廊下を横切らずに行けて、入口から部屋の様子が見える。掃除の頻度は変わらないのに、砂の山は毎日崩れるようになった。揺れていた爪とぎは壁際に寄せて、下に滑り止めを敷いた。猫が戻ってくるまでに、それほど時間はかからなかった。
代わりに失うものもある。リビングのトイレは来客の目に入るし、床も取られる。隠すか、使われるか。どちらかを選ぶことになる。そして、1匹と子供2人、2LDKという家なら、トイレも爪とぎも1つずつ増やすのが床の上で収まらないこともある。そのときは数を諦めるのではなく、上に逃がす。爪とぎは壁に面で取る。数は起点で、答えは配置だ。
迷ったら、家が一番うるさい時間に床へ座って、猫がどこを通ってどこで寝ているかを見る。10分で分かる。買う前に、その10分を取る。