ペット可の物件でも、猫の条件は契約書の別の場所に書かれている

目次
  1. 条件は、五つの枠に分かれて書かれている
  2. 五つの枠は、同じ紙に並んでいるとは限らない
  3. 「ペット可」と「ペット不可(相談可)」は何が違うのか
  4. 決めるのは貸主と管理会社。契約書の言い回しにも形がある
  5. 申込の段階で聞かれること、出すもの
  6. 内見の日に見ておくと、あとで困らないもの

「ペット可」という表示は、猫がその部屋に住めるかどうかを決めるものではない。あれは「この部屋で動物を飼う話をしてもよい」という入口の印で、実際にどの動物を、何匹、どこで、退去のときに何が起きるかは、契約書の特約条項や重要事項説明書の別の欄に、条件として項目ごとに書き分けられている。だから物件を探すときに読むべきなのは、広告の「ペット可」の四文字ではなく、契約の直前に渡される書面にある、動物の種類・体重やサイズ・頭数・飼育場所・退去時の原状回復という五つの枠のほうになる。

ペット可の物件でも、猫の条件は契約書の別の場所に書かれている

私がそれを思い知ったのは、いま住んでいる部屋の契約前日の夜だった。ダイニングテーブルの上に、クリアファイルから出したA4の書類が十枚ほど重なっている。右端に黄色い付箋を貼って、私は二枚目と三枚目の間にある「特約条項」という小さな見出しを、シャープペンの先でなぞっていた。不動産屋の担当者が内見のあとに言った「ペット可なので大丈夫ですよ」という一言を、書面のどこかで見つけたかった。見つからない。代わりにあったのは、番号の振られた短い文が六つ、七つと並んだページだった。

一本目は「飼育できる動物は、小型犬または猫とする」。猫を迎えるつもりでいた私は、ここでいったん息を吐いた。

二本目で手が止まる。「体重は八キログラム以下とする」。迎える予定だった猫は、成猫でも五キロに届くかどうかという体格だった。数字の上では通る。それでも引っかかったのは、この八キロという数字が、猫を測るために置かれた線には見えなかったからだ。犬の体重制限として見たことのある桁で、猫のための数字ではない。こういう行には、あとで戻ってくることになる。

三本目は頭数で、「二匹まで」とあった。私は一匹のつもりだったので、ここは素通りできる。ただ、この「2」という数字が、部屋の広さの話でも、私の生活の話でもないことは覚えておいた。

四本目は飼育場所だった。「室内に限る。ベランダ、共用廊下、庭には出さないこと」。内見のときに見た小さな庭を思い出す。あの庭に猫を出せるかどうかは、「庭付き」という物件の説明ではなく、この一行が決めている。

五本目が、いちばん長かった。退去のときのことである。畳の表替え、クロスの張替え、消臭と抗菌の施工。どれを誰が負担するかが、項目として並んでいた。金額は書かれていない。書かれているのは、退去のときに何をするかという作業の一覧と、その負担の向きだけだ。私はここで、少し姿勢を変えて座り直した。この紙は、明日サインする前に読むもので、退去の三日前に読むものではない。

翌日、私はこの五つの枠をメモにして、担当者の前に座った。聞いたのは一つだけ。「この部屋で猫を一匹飼う場合、この条件のどこに引っかかるか」。返ってきた答えは、特約条項の文言そのものではなく、申込のときに出す書類の話だった。条件は契約書の中だけにあるのではなく、申込から審査までの間に、別の形で何度も出てくる。

条件は、五つの枠に分かれて書かれている

物件によって、項目の名前も数も、並ぶ順番も違う。それでも私が見てきた書面では、ペットの話はたいてい五つに分かれていた。

動物の種類

「ペット可」という広告には、種類の情報がない。「犬のみ」「猫のみ」「犬と猫」「小型犬のみ」と、実際の書き方はさまざまだ。猫を探している人が「ペット可」の四文字で安心してしまうのは、この枠が広告の側に存在しないからだ。物件ページを何件めくっても、たいてい種類までは書いていない。

体重とサイズ

「体重は〜キロ以下」「小型犬程度まで」。この欄の数字や言い回しは、犬を基準に置かれていることが多い、というのが私の実感だ。猫はたいてい収まる。収まらないのは、体格の大きい猫種や、ぽっちゃりした成猫のほうになる。だから猫を飼う立場では、この枠は「通るかどうか」より「猫がどの区分に入る前提で書かれているか」を見る欄になる。読み切れないときは、契約の前に担当者へ確認して、確認した内容を申込書や確認書に残してもらう。記憶だけを頼りにしないで済む。

頭数

「一匹まで」「二匹まで」「頭数の制限なし」。多頭飼いの家では、ここで候補が大きく削られる。頭数は広告のラベルには出てこない。契約書か、申込書の記入欄で初めて出てくる。すでに二匹いる状態で部屋を探すなら、この枠を先に確認しないと、内見の時間がまるごと無駄になる。

飼育場所

「室内飼育に限る」という書き方が、私が見た中では多かった。ほかに、ベランダと庭と共用廊下を名指しで外す書き方、ケージの中での飼育を原則にする書き方もあった。畳の部屋をどう扱うかまで書いてある書面もあった。猫は高いところに上がるので、網戸や窓まわりの扱いについて一言ある物件もあって、その一言は住み始めてから効いてくる。

退去時の原状回復

ここは、契約のときにしか決められない枠だ。入居してから「この項目はなしにしてください」とお願いする種類のものではなく、契約の前に読んで、納得してからサインする種類のものになる。通常の使用による損耗は貸主、それ以外は借主、という整理が一般には言われるが、ペットの飼育はその整理の外側に置かれて、特約として別に列挙されることが多い、というのが私の周りで見てきた形だ。畳の表替え、クロスの張替え、消臭や抗菌の施工。入る項目は物件ごとに違い、すべての書面に同じ一覧があるわけではない。項目の数より、「退去のときに何をするかが、この時点で決まっている」という事実のほうが重い。

五つの枠は、同じ紙に並んでいるとは限らない

種類と頭数は特約条項のページ、飼育場所は重要事項説明書の中の一文、退去時のことは別紙の「原状回復について」という一枚。私のときは、そう分かれていた。同じA4でも、契約書本体と、ホチキスで留められた別紙では、読む順番が違う。一枚を読んで「ペット可、よし」と閉じてしまうと、別の紙に残った条件が机の上に取り残される。

契約の日は書類の枚数が多い。だから私は、五つの枠を付箋の色で分けて、机の上に全部の紙を一度広げることにした。種類は青、頭数は緑、退去時は赤。色の数だけ、確認する場所がある。

「ペット可」と「ペット不可(相談可)」は何が違うのか

「ペット可」は、貸主が条件つきで飼育を認めている状態を指す言い方。「ペット不可(相談可)」は、原則は不可だが、個別に打診はできる状態を指す言い方。広告の中では似た顔をして並んでいるが、意味はかなり違う。ただし、どちらも「では猫が何匹まで大丈夫なのか」には答えていない。答えを持っているのは、広告ではなく、申込の段階で出てくる書類と、貸主・管理会社の判断のほうだ。

実際、「ペット可」と書かれた部屋を二件見ただけで、条件の細かさはまったく違った。一件は猫の種類、頭数、年齢、そしてワクチンの証明まで求められた。もう一件は「猫一匹、室内飼育」の一言で終わった。広告の見た目からは、この差は見えない。

決めるのは貸主と管理会社。契約書の言い回しにも形がある

ペットの欄の書き方には、いくつかの形がある。「ペットの飼育を認める」と書いてあるもの。「貸主の承諾を得たうえで飼育することができる」と書いてあるもの。後者の形のほうが、あとから頭数を増やすときや、猫が増えたときの手順が細かく添えてある、というのが私の周りで見た傾向だ。ただし、これは私が見た範囲の話であって、言い回しが全国で同じというわけではない。

前提として持っておきたいのは、猫を飼ってよいかを最終的に決めるのは貸主や管理会社であり、こちら側の希望や生活の事情がそのまま条件になるわけではない、ということだ。だからこちらが用意できるのは、条件を確認するための質問と、確認した内容を残すための書面になる。私はこの前提を、部屋探しの最初に置くようにしている。腹は立たない。相手が決めることだと分かっていれば、聞くべきことが先に決まる。

申込の段階で聞かれること、出すもの

私のときに用意したのは、猫の種類・年齢・頭数・去勢や避妊の有無を書く欄のある申込書、猫の写真、混合ワクチンの接種証明、そして契約書とは別の「ペット飼育に関する確認書」だった。物件によって求めるものは違う。マイクロチップの登録証を出した知り合いもいれば、写真一枚で済んだ人もいる。

共通しているのは、順番のほうだ。これらは契約のあとではなく、契約の前、申込の段階で出てくる。つまり猫の条件は、契約書を開くより前に、すでに何度も確認されている。契約の前日の夜に私が読んでいた五つの枠は、その確認の集大成だった、という見方もできる。

内見の日に見ておくと、あとで困らないもの

五つの枠を頭に入れてから内見に行くと、見るものが変わる。畳の部屋がいくつあるか(退去時の項目に畳の表替えがあるなら、その枚数がそのまま効いてくる)。窓と網戸の状態。爪とぎを置ける壁の面積。玄関と共用廊下の音。ベランダの有無、そしてそこが「出さないこと」と書かれていないか。物件の良し悪しを測るのではなく、五つの枠に当てはめるために見る、というのが私のやり方だ。

ここに書いたのは、私が自分の契約と、まわりの部屋探しを見てきた範囲の話だ。項目の名前も数も順番も、物件ごとに違う。だから「ペット可と書いてあればこうなっている」という覚え方ではなく、「広告のラベルは入口で、条件は種類・体重・頭数・場所・退去時の五つの枠に分かれて書かれている」という読み方を持っておく。物件を比べるときに効くのは、この読み方のほうだ。猫を迎える前に机へ広げるべき紙は、広告のコピーではなく、契約直前の書類の束である。

猫の爪痕

執筆者について

猫の爪痕

猫と暮らす年月が長くなり、爪とぎの跡や換毛期の抜け毛が部屋の景色に溶け込んでしまった人たちです。多頭飼い、引っ越し、シニア猫との暮らしをそれぞれに経験しながら、猫種ごとの性格や手入れの重さを日々の暮らしの中で見てきました。

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