賃貸の爪とぎ対策は、入居から日が浅いほど効きやすい

目次
  1. 空っぽの部屋で、まず巾木を見る
  2. 爪が当たるのは、面ではなく変わり目
  3. 最初の一週間で、猫は場所を決める
  4. 「ペット可」の一言で終わらせない
  5. 傷をゼロにする話ではない

賃貸での爪とぎ対策は、入居から日が浅いほど効きます。壁紙がまだ入居時の状態と一致していて、どこに爪が引っかかりやすいかを実際の壁を見ながら判断でき、猫の側もまだ部屋の中に「爪をかける場所」を決めていないからです。順番としては、契約書とペット規約で原状回復の扱いを確認し、入居時に壁・柱・床の写真を撮り、そのうえで爪とぎの位置を決める。この三つを入居の週のうちに済ませておくと、あとから剥がしたり詰めたりする作業がかなり減ります。

空っぽの部屋で、まず巾木を見る

私は入居の日、鍵を受け取ってから荷物を運び入れるまでのあいだに、スマートフォンを持って部屋を一周します。カーテンも家具もない部屋は、壁がやけに広く見える。その広さを前にして、最初に見るのは壁の真ん中ではありません。床と壁の境目にある白い帯、巾木です。ここだけ硬くて、その上の壁と材質が違う。猫の爪は、材質が変わる場所で止まります。

次に見るのは、玄関から部屋へ入る動線の曲がり角。廊下から居室へ入るところの出隅、つまり外側に突き出た角です。猫は走ってきて、そこで曲がる。曲がるときに後ろ脚の爪が壁をかすめる。だからあの角は、まだ何も置いていない部屋の時点で、少しだけ爪の跡が付いていることがあります。

写真は、傷の証拠ではなく比較の基準

撮り方は、引きで一枚、寄りで一枚。出隅、巾木の上端、壁紙の継ぎ目、ドア枠の際、窓の下。メジャーでも定規でもいいので、長さの分かるものを当てて撮っておくと、あとで比べやすい。写真に日付が残る設定にしておきます。

これは退去のときに差し出す証拠ではありません。一年後、この壁はもともとこうだった、と自分で確かめるための基準です。基準がなければ、その傷がいつ付いたのか、自分でも分からなくなる。管理会社に何かを説明するかどうかは別の話で、まず自分の記憶の物差しを作っておく。入居の日にしかできないのは、この一点です。

爪が当たるのは、面ではなく変わり目

猫が爪をとぐとき、体は壁に対して横向きで、前脚を上へ伸ばします。平らな面では爪は滑る。角、継ぎ目、巾木の上端、壁紙の重なり。素材か向きが変わる場所でだけ、爪がわずかに食い込む。

壁紙の表面は薄い化粧シートで、その下は石膏ボードです。石膏ボードは思っているより柔らかい。一度食い込んだ爪が下へ走ると、表面が白く浮いて毛羽立つ。毛羽立った場所はもう滑らないので、次の爪とぎもそこへ来る。同じ場所が少しずつ広がっていくのは、そういう仕組みです。

だから爪とぎの位置は、壁から少し離して置きます。ぴったり寄せて置くと、伸びをしたときの爪先が爪とぎの上端を越えて、そのまま壁に届いてしまう。私は拳ひとつぶんほど離します。突っ張り棒タイプの爪とぎなら、壁と直角ではなく少し角度を振ると、伸びの軌道が壁の外へ逃げます。

最初の一週間で、猫は場所を決める

新しい部屋に入った猫は、まず壁沿いに歩いて、部屋の輪郭を覚えます。匂いを付け、頬をこすりつけ、何度か爪をかける。その最初の数日で付けた痕が、そのあとの基準になる。同じ爪とぎをリビングの隅に置いても、猫がそれを覚えなければ意味がありません。猫が爪をかけたがるのは、たいてい起きた直後、食事のあと、人が帰ってきたときの玄関まわりです。

迎えたばかりの時期は、緊張で爪をかむように爪とぎをする回数が増えることもあります。引っ越し直後はなおさらです。つまり入居直後というのは、猫が新しい縄張りに印を付け始める時期と重なる。壁をかく前提で、かいてほしい場所を先に用意しておく。順番が逆になると、あとから「そこはやめて」と言い続けることになります。

ただし、壁をまったくかかない猫もいます。爪を切っているか、年齢が高いか、性格か。だからこれは、必ず傷むという話ではなく、傷む可能性がある前提で位置を決めておく、という話です。

「ペット可」の一言で終わらせない

ペット規約には、頭数や種類のほかに、退去のときの扱いが書かれています。原状回復の範囲、どこまでが通常の使用による損耗で、どこからが故意・過失とされるか。実際の退去費用は、その線引きをどう当てはめるかで変わります。

ここで大事なのは、その線引きが契約ごとに違うという点です。同じ壁紙の同じ傷でも、判断は一律ではありません。私のまわりでも、管理会社によって説明の仕方が違いました。だから計画を立てる前に、条項を読み、分からない言葉は管理会社に聞く。面倒ですが、順番としては写真より先です。原状回復の考え方は一般的な枠組みがあっても、自分の部屋にどう当てはまるかは、その契約書にしか書かれていません。

傷をゼロにする話ではない

ここまでの話を「壁を無傷で返す方法」として読むと、たぶん失敗します。爪のある猫と暮らせば、どこかは傷みます。柱やドア枠のような硬い部分は爪が滑りやすく、まだ持ちこたえる。代わりに、柔らかい壁面と、その変わり目に負担が集まる。

私が入居の日に決めているのは、傷ませないことではなく、どこで傷ませるかです。爪とぎを置く場所、家具の背中を壁から離す距離、猫が曲がる角に何を置くか。入居から日が浅いほど、この選択肢は多い。家具の位置も、猫の習慣も、まだ固まっていないからです。時間が経ってから同じことをしようとすると、剥がす作業と、猫に別の場所を覚え直させる作業の両方が必要になる。

退去の日に壁を見て、あのとき写真を撮っておけば、あの角に爪とぎを置いておけば、と思う。たぶんどの部屋でも、その順番で来ます。だから入居の日は、荷ほどきより先に、壁を見るところから始めています。

猫の爪痕

執筆者について

猫の爪痕

猫と暮らす年月が長くなり、爪とぎの跡や換毛期の抜け毛が部屋の景色に溶け込んでしまった人たちです。多頭飼い、引っ越し、シニア猫との暮らしをそれぞれに経験しながら、猫種ごとの性格や手入れの重さを日々の暮らしの中で見てきました。

私たちについて