春と秋に抜け毛が増えるのはなぜ?換毛期のグルーミングの整え方

目次
  1. 体が読んでいるのは、明るさの合計
  2. 冷暖房の部屋では、山が低くて長くなる
  3. 梅雨は毛を絡ませ、暖房は毛を飛ばす
  4. 山の二、三週間前に始める
  5. 寝床と、毛づくろいの場所
  6. 年によって、少しずつ違う

春と秋に抜け毛が増えるのは、昼の長さと気温の変化に体が合わせて、被毛を次の季節の仕様に切り替えているからです。カレンダーで決まっているわけではないので、山が来る時期は毎年同じ日ではなく、数週間ずれることもあります。だから準備は一つで足ります。切り替えが始まる少し前から、一日一回、十分ほどブラシを通す習慣を先に置いておくことです。

三月の初め、まだこたつを出したままの部屋で、私は床に座って猫を膝に乗せています。窓から入る午後の光が低くなっていて、その中を細かい毛がゆっくり漂っている。ブラシを背中に当てると、最初は軽い「シャッ」という音だけ。五回、六回と繰り返すうちに、ピンの間に灰色の毛が溜まって、塊のまま落ちてきます。指でつまむと、見た目より重い。

その日は捨てる前に、抜けた毛をティッシュの上に広げてみました。二月の終わりに取れた毛は短くて細い。三月の半ばに取れた毛は、少し長くて、太い。同じ背中から、違う毛が生え替わっている。カレンダーを見るより、手のひらの上の毛の長さを見たほうが、今がどの段階なのか分かる。それからうちでは、ブラシに溜まった毛を捨てる前に、少しだけ広げて見るのが習慣になりました。

体が読んでいるのは、明るさの合計

猫の体が季節として数えているのは、日付ではなく、明るい時間の合計です。日の出が早くなり、日没が遅くなって、一日の光の量が伸びてくると、体は暖かい季節が来ると判断して、冬の毛を落とし始める。秋はその逆で、光が短くなったほうへ向かって毛が替わっていく。気温も手がかりになりますが、光のほうが先に動くので、暖かい日が続いた年でも抜け始めは案外ふつうだったりします。

うちは南向きの窓が一つだけの部屋なので、晴れた午前中はかなり明るくて、雨が続くと一日中うす暗い。そういう年は抜け始めが少し遅れた気がする、という程度の話で、数を数えたわけではありません。ただ、何年も同じ部屋で同じ猫を見ていると、晴れの日数と毛の立ち上がりの間に、ゆるい連動があるように見えてきます。窓の向きが違う家に引っ越したら、この感覚もまた変わるのだろうと思います。

冷暖房の部屋では、山が低くて長くなる

一日のほとんどを室内で過ごす猫は、季節の差が圧縮されます。夏も冬もエアコンが効いた部屋にいると、光も温度もなだらかになるので、抜け毛は「すごい山」ではなく「低くて長い山」になりやすい。うちがまさにそれで、四月に一気に来るというより、四月から五月にかけて細く長く続きます。

実家の、縁側と庭を行き来している猫は違いました。春はいきなり大量に抜けて、二、三週間で終わる。山がはっきりしているぶん、こちらのほうが短期集中で片づきます。どちらが良い悪いではなくて、掃除の計画が変わるというだけのことです。山が高いなら短期決戦、低くて長いなら、量は少なくても毎日少しずつ。

梅雨は毛を絡ませ、暖房は毛を飛ばす

同じ抜け毛でも、六月と十二月では質が違います。梅雨の時期は部屋の湿度が上がって、毛がしっとりして絡みやすい。ブラシがするすると通らず、途中で引っかかる感触がある。耳の後ろ、前脚のつけ根、後ろ脚の間あたりは、放っておくと毛が寄れて小さな束になりやすい場所です。この時期は、細かいピンのブラシをいきなり当てるより、目の粗いコームで束をほどいてからにしたほうが、猫も嫌がりません。順番を逆にすると、絡んだ毛を引っぱることになって、ブラシを見ただけで逃げるようになります。実際、うちはそれを一度やりました。

冬は逆です。暖房で空気が乾いて、抜けた毛が静電気で壁やソファに貼りつく。床に落ちる量は少ないのに、家中の表面がざらつく。だから冬の掃除は床ではなく、高いところと垂直の面になります。テレビの裏、棚の側面、ストーブの周り。畳は目が粗いので、落ちた毛が織り目に入り込んで、掃除機をかけても表面だけきれいになったように見える。少し湿らせた布で一方向に拭くと、織り目の中から出てきます。

山の二、三週間前に始める

ブラシを毎日入れるなら、山が来てから始めるより、二、三週間前から始めたほうが楽です。理由は量ではなくて、毛が絡む前に取れるからです。抜けかけの毛を被毛の中に残しておくと、毛づくろいで舐められるたびに寄れて、束になっていく。束になってから取ろうとすると、どうしても引っぱることになる。痛い思いをしたブラシは、その後しばらく使わせてもらえません。先に始めるというのは、その一番面倒な段階を飛ばすための準備です。

十分という時間も、毛を全部取り切るための数字ではありません。猫が飽きる前に入る、という意味の目安です。うちの猫は五分もするとしっぽの先が動き始めるので、背中、脇、しっぽのつけ根で一度終わり。夜にもう五分。合わせて十分で、一度に十分やるより、このほうが続きます。時間を守るというより、猫の合図のほうを見ている感じです。

寝床と、毛づくろいの場所

抜け毛が集まる場所は、部屋全体に均等ではありません。猫が長く寝ている場所と、座って毛づくろいをする決まった場所に、はっきり寄ります。うちだと、寝床のクッション、こたつの上の座布団、そして猫が座ってお腹を舐める畳の一点。この三箇所を朝いちに拭いてしまえば、あとは一日のどこかで一度で足ります。抜け毛の時期に増やすのは、掃除する面積ではなく、この三箇所を拭く回数のほうです。

場所が固定されているのは、猫の側の理由もあります。毛づくろいは安心できる場所でしかしないので、そこで毛が落ちる。つまり汚れる場所は、そのまま猫が「ここは落ち着く」と決めた場所でもあります。掃除のリズムは、猫の生活の地図をなぞっているだけなのかもしれません。

年によって、少しずつ違う

同じ猫でも、年齢や体格、避妊去勢の有無、被毛の長さで、抜け方は変わります。長毛の猫は短毛の猫より絡みやすく、同じ山でも手のかかり方が違う。若い猫と高齢の猫でも、毛の替わり方は同じではありません。うちの猫の三月が、すべての猫の三月ではない。だからここに書いた時期と量は、うちの部屋とうちの猫で見てきた一例として読んでください。大事なのは日付ではなく、毛の長さと手触りを毎日見ていることのほうです。

一年を振り返ると、うちの猫の毛は、量と質で季節を教えてくれます。短くて細い毛の時期、太くて長い毛の時期、しっとり絡む時期、乾いて飛ぶ時期。カレンダーを見なくても、ブラシに溜まった毛で今がどのあたりか分かる。抜け毛は一年中続く困りごとではなくて、年に二回、はっきり形を変える出来事なのだと、そう思っています。

猫の爪痕

執筆者について

猫の爪痕

猫と暮らす年月が長くなり、爪とぎの跡や換毛期の抜け毛が部屋の景色に溶け込んでしまった人たちです。多頭飼い、引っ越し、シニア猫との暮らしをそれぞれに経験しながら、猫種ごとの性格や手入れの重さを日々の暮らしの中で見てきました。

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