蒸し暑い夏と寒い冬、バーマンは日本の気候にどう適応する?

目次
  1. 夏は「風」より「逃げ場」を先に作る
  2. 冬は暖房より、乾きのほうに気を取られる
  3. 梅雨は匂いで先に気づく
  4. 換毛は春と秋にまとめて来る
  5. 歳を取ると、季節の幅が狭くなる
  6. 適応しているのは、たぶん私のほう

バーマンは、日本の蒸し暑い夏にはやや不利で、寒い冬には比較的強い。セミロングの被毛は冬の保温には向くが、湿度の高い季節には熱を持ちやすい。だから気候への適応で動かすべきなのは猫の体ではなく、部屋の空気と、猫が横になる場所のほうだ。

蒸し暑い夏と寒い冬、バーマンは日本の気候にどう適応する?

私がそう考えるようになったのは、八月の午後、うちのバーマンがフローリングのいちばん硬いところに腹をぴったりつけて伸びていたのを見た日からだ。クッションも、猫ベッドも、涼しそうな麻のマットも無視して、である。手を当てると床だけがひんやりしていた。猫は自分で地面の温度を測っている。測れる場所を室内にどれだけ残してやれるか。それが夏の課題だと、そのとき理解した。

夏は「風」より「逃げ場」を先に作る

エアコンの設定温度を何度にするかより、風がどこを抜けていくかのほうが、うちでは効いている。冷房の風が直接猫の寝床に当たると、若いうちは平気な顔をしていても、歳を取ると途端にその場所を使わなくなる。うちでは冷房の風向きを上向きにして、空気をゆっくり部屋の中に回し、猫のベッドを風の通り道から外した。涼しい空気が部屋を巡っていて、猫の寝床だけが直撃を避けている。その状態が理想になる。

バーマンは外に出ない。日陰を探しに行くことも、涼しい土の上で腹を冷やすこともできない。つまり夏の快適さは、ほぼ全部こちら側の設計で決まる。猫が移動して涼を取る代わりに、部屋の中に温度の違う場所をいくつか用意しておく。窓際の日向、廊下のひんやりした床、冷房の効いた部屋。猫はその日の気分で選ぶ。この選択肢の数が、暑い季節の安心につながっている気がする。

被毛の面でも、セミロングは夏に少し重い。毛をかき分けて地肌を見ると、湿気の多い日は毛がべったりと寝ている。ブラッシングは冬より軽く、毛を梳かして空気を通す程度にとどめている。抜け毛を取ることより、毛の間に風が入る状態を作るほうが、この季節は意味がある。

冬は暖房より、乾きのほうに気を取られる

十二月になると、猫はこたつでもヒーターの前でもなく、私の膝の上に来る時間が増える。被毛は冬になると明らかに厚みを増して、触ったときの密度が変わる。セミロングの利点がはっきり出る季節だ。

ただ、暖房を入れると空気が乾く。人間は喉で気づくが、猫の場合は被毛と肌で気づく。毛を逆立てて地肌を見たときに、粉をふいたような白いものが目立つようになったら、加湿を足す合図にしている。加湿の道具を置く場所は猫の寝床の近くを避ける。湿った冷気が直接当たると、冬はそれが別の負担になる。水飲み場もヒーターの真横は避けて、部屋の反対側に置いている。冬は水を飲む量が落ちやすいので、動線の途中に置くほうが結果的に飲んでくれる。

梅雨は匂いで先に気づく

梅雨の時期は、被毛よりも先にトイレと寝具の匂いが変わる。部屋の湿度が上がると、猫トイレの消臭だけでは追いつかなくなる。うちではこの時期だけ、シートの交換頻度を上げ、寝具も乾かしてから戻すようにしている。

これは被毛の手入れというより、猫が一日の大半を過ごす場所の衛生の話だ。蒸れた寝床で過ごす時間が長いと、毛が寝て、皮膚の状態も落ち着かなくなる。除湿をひとつ足すだけで、ブラッシングの手間が減ることもある。順番としては、部屋を乾かすほうが先で、毛を梳くのは後でいい。

換毛は春と秋にまとめて来る

バーマンの抜け毛は、一年を通して少しずつではなく、春と秋にまとまって来る。三月から四月にかけてと、十月から十一月にかけて。この数週間だけ、ブラシに取れる量が普段の何倍にもなる。

道具は二つを使い分けている。普段は毛先の柔らかい獣毛ブラシで、表面を整える程度。換毛期はゴムのラバーブラシに替えて、地肌に沿わせるように撫でる。ラバーのほうが抜け毛を絡め取る力が強く、同じ場所を何度も往復しなくて済む。往復が増えると、猫のほうが先に嫌になって逃げる。

換毛期に梳きすぎると毛が薄くなって寒さに弱くなる、という話を聞いたことがあるが、うちではそこまで気にしたことはない。気にしているのは、猫が途中で立ち去らない程度の短い時間で終わらせることだ。一度に全部やろうとすると、翌日から逃げられる。

歳を取ると、季節の幅が狭くなる

十歳を過ぎたあたりから、夏は涼しい場所から動かなくなり、冬は暖かい場所に貼りつくようになった。若い頃は行ったり来たりしていた場所を、もう選ばない。体温を自分で調整できる幅が、少しずつ狭くなっているのだと思う。

だからシニア期に入ったら、夏は冷房の効いた部屋を、冬は暖房の効いた部屋を、猫が自分で選べる状態にしておく。特別なことをするというより、若い頃は不要だった配慮が必要になってくる、という感覚に近い。暑い日にいつもと違う場所でぐったりしている、呼吸が速い、口を開けて息をしている。そういう様子が見えたら、それは被毛の手入れや部屋の調整でなんとかする話ではなく、動物病院に相談する話になる。涼しい場所に移動させて様子を見る、という対処で終わらせないほうがいい。

適応しているのは、たぶん私のほう

ここまで書いてきて、バーマンが日本の気候に適応しているというより、私のほうがバーマンに合わせて部屋を動かすようになった、というのが正直なところだ。夏は風の通り道を考え、冬は乾きを気にし、梅雨は匂いを嗅ぎ、換毛期はブラシの種類を替える。

猫の側から見れば、日本の夏と冬は乗り越えるものではなく、毎日そこにある条件でしかない。その条件を少し楽にするのは、外に出られない猫の代わりに部屋を見て回る人間の仕事だと思っている。

猫の爪痕

執筆者について

猫の爪痕

猫と暮らす年月が長くなり、爪とぎの跡や換毛期の抜け毛が部屋の景色に溶け込んでしまった人たちです。多頭飼い、引っ越し、シニア猫との暮らしをそれぞれに経験しながら、猫種ごとの性格や手入れの重さを日々の暮らしの中で見てきました。

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