長毛と短毛、ブラシをかける頻度と道具はどこで分かれるのか

目次
  1. 下毛に届く道具と、表面を拾うだけの道具
  2. 猫種のラベルではなく、毛の密度で選ぶ
  3. 長毛は、小さく分けて、ゆっくり、少ない頻度
  4. 短毛は、短く、頻繁に
  5. 同じ頻度でいい場所が二か所ある
  6. 順番と、コームが詰まったときの合図
  7. それでも、うまくいかない日のほうが多い

長毛と短毛でブラシをかける頻度と道具が分かれるのは、毛足の長さそのものではなく、肌の上にどれだけ密な下毛の層があるかという一点だ。長毛の猫は、毛をかき分けて根元まで届くコームで週に一度しっかり通し、間の日は表面を整えるだけで足りる。短毛の猫は、肌に届くスリッカーで毎日ごく短い時間だけ毛を起こす。ただし短毛でも下毛がびっしり詰まった猫は、道具も頻度も長毛側に寄っていく。毛の長さで決めているように見えて、実際に決めているのは密度のほうだ。

長毛と短毛、ブラシをかける頻度と道具はどこで分かれるのか

夜、畳の上に座って膝に猫を乗せると、私はまず手のひらで背中を一往復させる。毛が手のひらに引っかかるか、するりと抜けるか。引っかかるなら今夜は少し長めにやるし、するりなら流して構わない。ブラシを選ぶ前に、手のひらが先に決めている。

私はこの一往復を、道具を揃えるより先に覚えた。猫の体のどこに毛が溜まっているかを知らないまま道具だけ替えても、結果は同じになるからだ。リビングの灯りを少し落として、膝の上で猫が伸びをする。その重さが落ち着いたところで、やっと道具に手を伸ばす。

下毛に届く道具と、表面を拾うだけの道具

スリッカーやコームは、毛をかき分けて肌に近い層まで入っていく。ゴムのブラシや獣毛のブラシは、表面の毛と、もう抜けかけて浮いている毛を拾い上げるのが仕事になる。だから密な毛の猫にゴムのブラシをかけても、表面がなでられて、肝心の層にはほとんど何も起きない。手を動かしているのに毛が減らない、という手応えの薄い時間になる。

逆もある。毛が薄くて短い猫に、根元まで入るスリッカーをそのまま当てると、肌の上を引っかく感触になって、猫が膝から降りてしまう。道具が悪いのではなく、層に届きすぎているのだ。

効かないのは、力が足りないからではない。道具が層に届いていないか、届きすぎているか、そのどちらかだ。

猫種のラベルではなく、毛の密度で選ぶ

「短毛種だから軽い道具でいい」は半分しか当たっていない。短毛で知られる猫でも、冬に向かって下毛がびっしり立ち上がる時期がある。そういう子をゴムのブラシだけで済ませると、抜け毛は畳に落ちるが、体の上には残り続ける。反対に、長毛種でも毛量がそれほど多くない子は、毎日コームを通す必要はない。

例えば、同じ短毛のきょうだいでも、片方は冬になると肌が見えなくなるほど下毛が立ち、もう片方は一年を通して肌がうっすら覗いたまま、ということがある。見ているのはそこだ。毛を少し分けて、肌が見えるかどうか。肌が覗くなら層は薄い。どこまでも毛で埋まっているなら密だと判断する。猫種の名前は、この場面ではあまり役に立たない。

長毛は、小さく分けて、ゆっくり、少ない頻度

長毛の猫にコームを入れるときは、背中を何列かに区切って、一列ずつ根元まで通していく。全部を一度に梳こうとすると、表面だけが流れて、内側で小さく絡んだ毛が残る。もつれは、緩いうちに見つければ指でほどける。固まってから見つかると、猫も嫌がるし、私も無理ができない。

だから一回が長い。10分から15分、毛量の多い時期は20分近くかかることもある。膝の上で猫が寝返りを打つたびに、いったん手を止める。その代わり、毎日やらなくていい。週に一度しっかり通して、間の日は耳の後ろと脇の下を指で確認するだけで足りる。梳く日と、梳かない日がはっきり分かれているのが長毛のやり方だ。

短毛は、短く、頻繁に

短毛は逆になる。抜けた毛が体のすぐ近くに溜まり、少し持ち上げると、もう次の毛が浮いてくる。一度に全部取ろうとしても限界がある。5分で切り上げて、翌日また5分。これを週に何度か繰り返す。週に一度30分かけるより、畳に落ちる毛の総量は減る。短毛は頻度で取り、長毛は一回の中で取る、というのが私の実感だ。

ここで一つ断っておくと、これは毛足の長さだけの話ではない。短毛でも下毛が濃い子は、この短いパスを週に何度もやることになるし、換毛期には毎日になる。頻度だけを数えれば、長毛の猫より多くなることさえある。

同じ頻度でいい場所が二か所ある

耳の後ろと尾の付け根は、毛の長さに関係なく、毎日短く触る。ここだけは道具を変える必要がない。指先で毛を分けて、毛がこすれて固まっていないかを見る。長毛も短毛も、この二か所は同じ頻度で、同じやり方でいい。

分かれるのは体の広い面であって、端のほうではない。短毛だから毎日、長毛だから週に一度、という括りをそのまま体全体に当てはめると、この二か所だけ妙に手が遅れる。実際には、ここは誰の猫でも毎日でいい。

順番と、コームが詰まったときの合図

私が通っているのは、背中、脇腹、お腹、尾の付け根、耳の後ろ、という順番だ。理由は単純で、猫が嫌がる場所を後ろに置いている。背中から始めると、たいていの猫はそのまま寝てしまう。脇腹で少し身をよじる。お腹は触らせてくれる子とくれない子がはっきり分かれる。尾の付け根では多くの猫が尻尾を立てる。耳の後ろは最後、眠りかけたところをさっと済ませる。

先に嫌がる場所をやると、そこでその日のセッションが終わる。順番は、10分で取れる毛の量を変える。

もう一つ、手を止める合図がある。コームに毛がぎっしり挟まったまま続けていると、新しい毛を拾わず、すでに取った毛を体の上に広げているだけになる。だからひと房ごとに、コームを指でしごいて毛を落とす。落とした毛は横の小さな器にまとめて置く。畳の上に直接置くと、あとで拾うのが面倒だし、風で流れる。

抜け毛は畳の目に入る。掃除機をかけても目の中に残るので、終わったあとは濡らした手で一方向に撫でてまとめる。ここまでがブラッシングという作業だと思っている。

それでも、うまくいかない日のほうが多い

全部を毎日きれいにしようとすると、猫も私も疲れる。夏の換毛期は明らかに量が多く、冬に近づくとコームに乗る毛は減る。機嫌の悪い日は背中だけで終わる。調子がすぐれない様子の日は、その日は触らずに離れる。

分けているのは毛足の長さではなく、肌の上にどれだけ密な層があるか。そして、分けているのは頻度そのものではなく、一回あたりにどれだけ丁寧に層へ届いたか、だ。毎日5分の短毛も、週に一度の長毛も、この一点だけは同じことをしている。

猫の爪痕

執筆者について

猫の爪痕

猫と暮らす年月が長くなり、爪とぎの跡や換毛期の抜け毛が部屋の景色に溶け込んでしまった人たちです。多頭飼い、引っ越し、シニア猫との暮らしをそれぞれに経験しながら、猫種ごとの性格や手入れの重さを日々の暮らしの中で見てきました。

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