爪切りは滑らない床で、体を支える役を決めてから始める

目次
  1. 道具より先に、床
  2. 正面から座らない
  3. 支える手は、下から面をつくる
  4. 爪を持つ手は、握らない
  5. 1本切ったら、いったん離す
  6. やめる合図は、後ろ足に出る
  7. 二人でやるときに決めておくこと
  8. それでも、1本で終わる日がある

猫の爪切りは、滑らない床の上で、体を支える役と切る役を先に決めてから始める。抱え上げて宙に浮かせたまま切ろうとすると、猫は足場を失って暴れる。床に座り、猫が自分で踏ん張れる面の上で、片方が体を支え、もう片方が切る。役割と順番を先に決めておけば、1回にかかる時間はぐっと短くなる。何日おきにやるかより、この体勢のほうが結果を左右する。

爪切りは滑らない床で、体を支える役を決めてから始める

私は、爪切りを始める前にまず床を選ぶ。道具より先に床だ。

道具より先に、床

リビングのラグを一枚、ソファの前から引っぱがして、フローリングの上に敷き直す。厚すぎないものがいい。ふかふかのラグだと猫の足が沈んで、かえって踏ん張りが効かない。薄手の綿のものくらいがちょうどいい。

畳の部屋なら、敷かなくてもそれなりに踏ん張れる。ただし爪先が畳の目に引っかかると、猫は嫌がって足を引いてしまう。うちではその上に薄い布を一枚かける。フローリングの部屋なら、ラグは必須だと思っている。ツルツルした面の上では、猫は立っているだけで精一杯で、爪どころではない。

床を決めてから道具を出す。爪切りを先に取り出すと、その小さな音で猫が部屋を出ていく。順番ひとつで難易度が変わる。

正面から座らない

座り方は、床に直接、脚を軽く開いて伸ばし気味に。膝を立ててその間に猫を入れると、逃げ場がないと感じて身構える。太ももの内側に猫の脇腹が沿う形がいい。

切る側は、猫の真正面に座らない。目が合うだけで猫は緊張する。体の向きは斜めにして、猫の顔は誰も見ていない方向へ向けておく。テレビがついているなら消す。音よりも、光のちらつきのほうが気になる猫は多い。

支える手は、下から面をつくる

支える役は猫の後ろに回って座る。片手を胸の下に入れ、もう片方の手でおしりを下から受ける。指で抱え込むのではなく、手のひらと前腕で面を作って、猫がそこに体重を預けられるようにする。

大事なのは、支えられていることと、押さえつけられていることは猫にとって別物だという点だ。手のひらの下で猫が少し押し返してくる感触があれば、支え方は合っている。逆にぴくりとも動かず固まっていたら、押さえつけられている。そのときは手をゆるめる。

顔は猫の耳の横に置かない。息がかかるだけで嫌がる猫は多い。猫の体と自分の体の間に、指が一本入るくらいの隙間を残しておく。その隙間があると、猫はもぞもぞと体勢を直せる。

爪を持つ手は、握らない

切る側は、前脚をひとつ取る。手のひらを下から添えて、人差し指を爪の付け根の後ろ側に回す。親指は肉球の後ろに軽く当てて、肉球を指の腹で受ける。この形だと、爪先だけが上を向いて出てくる。指全体でぎゅっと握り込むと、猫は圧のほうを先に感じて引っ込める。

押し出す必要はない

爪先を無理に押し出さなくていい。肉球の後ろを親指でほんの少し押し上げるだけで、爪は出てくる。出てこないときは、握り方を強くするのではなく、いったん手を離して添え直す。後ろ足は前脚より難しい。多くの猫は後ろ足を触られるのを嫌うので、前脚で慣れてから、日を分けて後ろ足に進む。

1本切ったら、いったん離す

ここが、たぶんいちばん抜けている。

1本切ったら、その脚を離す。握ったまま次へ行かない。

離すと、猫は体重を床に戻す。後ろ足の裏が布を掴み直し、耳の向きが戻り、唾を飲む。その2秒ほどを待つだけで、次の1本が入りやすくなる。逆に握ったまま2本目、3本目と進めると、猫のなかでは「掴まれたまま」の状態が続いて、途中で一気に抵抗に変わる。

切った爪は床に落ちる。あとで掃除機をかけると、白い粒が思ったより広く散っている。それくらいの間隔で、1本ずつ離している。

やめる合図は、後ろ足に出る

止めるタイミングは、顔つきより後ろ足を見たほうが早い。後ろ足の裏が滑り始めたら、体勢が崩れかけている。うちではそれを見たら、その日は切り上げる。

しっぽの先が床を叩き始める、耳が横を向く、呼吸が浅く速くなる、といった合図も出る。どれかひとつでも出たら、1本で終わる日にして構わない。爪は1日では伸びない。翌日にまた座ればいい。

だから、始めるときに「何本切るか」は決めない。決めるのは、誰が支えるか、どこに座るか、どの脚から触るかの3つだけ。

二人でやるときに決めておくこと

支える役と切る役は、途中で交代しない。交代の一瞬は、必ずどこかの手が離れる。そこが一番危ない。切る役が疲れたら、交代ではなく、その日を終わりにする。

二人目は、必要なときだけ手を出す。たとえば爪が毛に埋もれている長毛の猫なら、毛を分ける役がもう一人いると早い。前脚を持つ手と、爪を探す手が別々になる。それだけで1本あたりの時間が縮む。

机の上でやる方法もある。腰は楽だ。ただし机は滑るし、落ちる高さがある。猫が踏ん張れないぶん、支える手が事実上すべての重さを受けることになる。腰がつらい日は、机に上げるのではなく、床に座る姿勢のほうを変えたほうがいい。背もたれに寄るとか、座布団を一枚敷くとか、それだけで違う。

体格差も効く。体重の重い猫は、片手で胸の下を支えただけでは安定しない。大人が二人でも支えきれないことがある。その場合は無理をせず、1日1本ずつ、という進め方に切り替える。老齢の猫は関節が硬く、脚を動かされるだけで痛いことがある。支える面を広くして、脚を引っぱらない。

それでも、1本で終わる日がある

冬の乾燥した時期は、爪が割れやすい気がしている。これは感覚の話で、数字で示せるものではないけれど、うちではそういう時期は1本ずつ、間を長めに取る。

体調が良くない日、来客のあった日、掃除機をかけた直後。そういう日は、床を整えて座っても、猫が来ない。来ないなら、そこで終わりにする。爪切りは、猫が逃げないことを確かめてから始める仕事ではない。逃げるならやらない、という選択を含めて一連の手順だと思っている。

最後に、終わったあとのことを書いておく。切ったあとの猫は、たいてい何事もなかったように水を飲みに行く。こちらは膝が痛い。床の白い粒を拾って、道具を片づけて、ラグを元の場所に戻す。戻している途中で、猫がもう一度そこに来て座ることがある。次もそこでやればいい。

猫の爪痕

執筆者について

猫の爪痕

猫と暮らす年月が長くなり、爪とぎの跡や換毛期の抜け毛が部屋の景色に溶け込んでしまった人たちです。多頭飼い、引っ越し、シニア猫との暮らしをそれぞれに経験しながら、猫種ごとの性格や手入れの重さを日々の暮らしの中で見てきました。

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