猫アレルギーの原因は毛ではなく、唾液と皮脂から広がる

目次
  1. タンパク質は毛からではなく、腺から出ている
  2. 舞い上がるのは、決まった瞬間
  3. 落ち着く先は、たいてい布
  4. 毛は運び屋であって、発生源ではない
  5. 部屋でできるのは、経路を短くすること
  6. ゼロにはならない

猫アレルギーの原因は毛ではない。反応のきっかけとして最もよく知られているタンパク質は猫の唾液腺と皮脂腺でつくられ、皮膚が小さく剥がれたフケと、乾いた唾液に乗って部屋の中へ運ばれる。毛は、その粉が引っかかる場所のひとつにすぎない。だから毛を短く刈っても、抜け毛をこまめに取っても、空気と布に残る粉の量はほとんど変わらない。追いかけるべきは毛ではなく、目に見えない粒子のほうだ。

猫アレルギーの原因は毛ではなく、唾液と皮脂から広がる

午後の日差しが斜めに差し込む部屋で、私は猫を膝にのせてブラシをかけていた。光の帯の中を、細かい粉がゆっくり横切っていく。ブラシに絡んでとれた毛玉は膝から落ちて床にたまるのに、あの粉は落ちてこない。少し経つと空気に薄く広がって、どこが発生源だったのか分からなくなる。それを見てから、床に落ちた毛を数えるのはやめた。見るべきは空気と布のほうだと思うようになった。

タンパク質は毛からではなく、腺から出ている

まず押さえておきたいのは、このタンパク質が毛から染み出しているわけではない、ということだ。猫の体内では唾液腺と皮脂腺でつくられている。唾液は毛づくろいのたびに体中の毛に塗られ、皮脂は皮膚の表面を覆う。どちらも時間が経てば乾き、皮膚のいちばん外側が細かく剥がれるときに、一緒に体から離れる。

つまり、猫がどれだけ長く毛づくろいをするかが、そのまま粉の材料の量になる。よく舐める猫、皮脂の多い猫は、それだけ多くを出す。逆に、毛が短い猫でも、抜け毛が少ない猫でも、腺そのものは動き続けている。毛の長さと、この粉の総量は、分けて考えたほうがいい。

この順番を頭に置くようになってから、部屋の見え方が変わった。床の毛を見て「今日は少ない」と安心していたのが、いつのまにか、カーテンの裾や布団の表面を先に確認するようになっていた。

舞い上がるのは、決まった瞬間

空気中の粉がいちばん多くなるのは、ブラッシングの直後だ。ブラシが毛の表面の粉を浮かせ、猫が身をよじるたびにそれが舞う。光の帯に見えていたのは、まさにその瞬間だった。猫自身の毛づくろいの直後も同じことが起きる。舐めた唾液が乾いて剥がれ、まだ体の近くにあるうちに、猫が歩いたり跳んだりして散らばっていく。

この粉の厄介さは、軽さにある。落ち着くまでに時間がかかり、その間に部屋を移動する。廊下を抜け、隣の部屋のドアの隙間を通る。窓を開ければ外へ出ていき、閉めていればエアコンの気流に乗って部屋を回る。猫が一度も入っていない部屋の空気に、猫の粉が混ざっていることは珍しくない。

落ち着く先は、たいてい布

空気に漂っていた粉は、いつか必ずどこかにくっつく。そして、くっつきやすい相手が決まっている。布だ。カーテン、ソファ、クッション、こたつ布団、掛け布団、カーペット。畳も、目が細かいぶん粉を抱え込む。ツルツルのフローリングは拭き取りやすいが、布はそうはいかない。

服も同じだ。猫を抱いたあとのシャツ、膝にのせたときのズボン、洗濯かごに放り込む前の部屋着。粉は繊維の間に挟まり、歩くたびに少しずつまわりへ落ちていく。だから猫のいない部屋に入ったのに猫の気配がする、ということが起きる。前に住んでいた人が猫を飼っていた部屋、猫を連れて引っ越したあとの部屋でも同じだ。畳や壁紙、カーテンレールの上に、しばらく残る。

部屋干しの洗濯物も、この流れの中にある。乾いた布が室内の空気を浴びる時間が長いほど、粉が乗る。取り込んでタンスにしまうと、今度はその布が粉の置き場所になる。

毛は運び屋であって、発生源ではない

ここで一度、毛の話に戻しておく。毛が無関係なわけではない。粉が引っかかり、体から離れるときの乗り物になるからだ。ブラシに絡んだ毛玉の中にも、このタンパク質は当然入っている。毛を取る作業が無意味だという話ではまったくない。

ただ、順番を間違えやすい。毛を減らせば解決するという前提で部屋を見ると、見落とすものが出る。猫がしばらく座っていないソファ。洗ったばかりのはずのカーテン。抜け毛が少ない猫と暮らしているのに、部屋の空気がなんとなく重いという感覚。どれも、毛だけを見ていると説明がつかない。

部屋でできるのは、経路を短くすること

特別な道具が要るわけではない。粉が移動する経路を、ひとつずつ短くしていくだけだ。

猫に触れたあとに手を洗う。これは粉を部屋じゅうに運ばないための基本で、特別な対策というより、外から帰ったら手を洗うのと同じ種類の習慣だ。猫を抱いた服は、その日のうちに洗濯かごへ入れる。かごにふたがあるなら閉めておく。洗濯は普通の洗剤でかまわない。布から離れて排水に流れればいい。

布団やカーテンは、定期的に洗うか、干してから叩く。叩いた粉はその場で舞うので、できれば外で、風下に立たないように。カーペットやソファは、掃除機のあとに粘着クリーナーをかける。掃除機だけだと、布の奥に残ったぶんが後から浮いてくることがある。

空気は換気と空気清浄機で入れ替える。換気は外へ出す役割、空気清浄機は部屋を回っている粉を集める役割で、やっていることが違う。エアコンのフィルターも見ておきたい。気流をつくる機械に粉が付いていれば、運ばれ方が変わる。

順番を決めておくと続く

全部を毎日きれいにするのは続かない。私も続かなかった。だから、肌に長く触れる布を先にしている。枕カバー、シーツ、タオル、部屋着。次に、リビングで長く座るソファと、床の敷物。カーテンは季節の変わり目にまとめて。この順番なら、生活の形を大きく変えずに済む。

ゼロにはならない

正直なところも書いておく。この粉を室内から完全になくすことはできない。猫が生きて分泌している以上、材料は毎日出る。掃除のたびに全部が消えるわけでもないし、洗ったばかりの布にも、乾くまでのあいだにまた乗る。

だから目標はゼロではなく、量と経路の管理になる。どこで出て、どこを漂い、どの布にとどまっているか。それが分かっているだけで、掃除の順番も、布の選び方も、猫との距離の取り方も変わる。

ベランダで布団を叩くと、白い粉がふわっと光の中に広がって、すぐ見えなくなる。毛ではない。同じ粉だ。それだけ分かっていれば、明日の掃除をどこから始めるかは、自分で決められる。

猫の爪痕

執筆者について

猫の爪痕

猫と暮らす年月が長くなり、爪とぎの跡や換毛期の抜け毛が部屋の景色に溶け込んでしまった人たちです。多頭飼い、引っ越し、シニア猫との暮らしをそれぞれに経験しながら、猫種ごとの性格や手入れの重さを日々の暮らしの中で見てきました。

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