迎える前日に見落としがちな、脱走と転落につながる3か所

目次
  1. 窓と網戸は、押すのではなく預けてみる
  2. 洗濯機の裏、キッチンの裾、押入れの戸
  3. 棚の上と、床を這う細いもの
  4. 玄関とベランダ扉のルールは、前日の夜に決める

迎える前日にやるべきことは、用品の買い出しではなく、猫が体を押し込める開口部と、入ったまま戻れなくなる隙間を塞ぐ作業だ。見る場所は3つに絞れる。窓・網戸・ベランダ扉の開口部、洗濯機の裏やキッチン収納・押入れの隙間、そして棚の上に載っている物と床を這う細いもの。どれも、猫が来る前の、まだ猫がいない部屋でなければ腰を据えて確かめられない。家具が入り、猫が動き回るようになってからでは、同じ確認は二度とできない。

前日の午後、私はまず部屋の真ん中で床に座る。立ったまま見渡しても、目に入るのは家具の配置と壁紙の色だけだ。座ると、窓の下の壁と床の境目が見えてくる。エアコンの配管が通る穴、コンセントの高さ、カーテンの裾が届く位置。あなたも一度、そこに座ってほしい。猫はだいたい、その高さで部屋を見ている。

そこから四つん這いで壁沿いを一周する。指を伸ばして、壁と家具の間に差し入れる。指先が入って止まるなら、まだいい。手の甲まで入るなら、猫の肩は通る。ここで分かるのは隙間の広さではなく、自分の体がどこまで入るかだ。

窓と網戸は、押すのではなく預けてみる

網戸は内側から押されると外れる。指先で軽く押したくらいでは、たいてい「固い」と感じる。だから指で確かめても意味がない。手のひら全体を当てて、肩の重さを預ける。四つの角を、それぞれ。それから網戸の枠とサッシの間に指を差し込んで、上へ持ち上げてみる。数ミリ浮くなら、猫が走ってきて前足をかけたときに、同じだけ浮く。

猫は押すのではなく、助走してぶつかる。勢いを乗せて飛びつく。だから「人が押して開かない」は、ほとんど保証になっていない。下のレールに砂が噛んで浮いている家は、なおさらだ。内側に倒して開けるタイプの窓なら、開けた瞬間に猫の体重が乗る場所ができる。

ベランダ扉は、網戸だけ見ても足りない。室外機、植木鉢、物干しの竿受け。手すりの近くに、手すりへ上がるための踏み台になるものが残っていないか。猫は手すりに飛び乗る。乗った先から隣の住戸のベランダまで渡れる幅があるかどうかも、見ておく。集合住宅では、玄関から出るより静かに外へ出られる経路がここになる。

壁の穴も同じ棚に入る。エアコンの配管が通るスリーブ。キャップが外れ、パテが痩せていると、そこは直径数センチの開口部になる。網戸を直しても、この穴は別だ。

洗濯機の裏、キッチンの裾、押入れの戸

洗濯機の裏は、いちばん見落とす。本体の側面と壁の間に手を入れる。手首まで入る。肘まで入る。肘が入るなら、猫は入る。そして中の幅は、たいてい向きを変えられない広さで終わっている。

猫は頭から入る。肩が通れば体が通る。出るときは頭を返さないといけない。その円が描けない。だから中で鳴く。声は聞こえるのに、手は届かない。防水パンの配管があるから、洗濯機は簡単には動かせない。前日なら、まだ動かせる。そこが前日である理由のひとつだ。

キッチンは足元を見る。シンク下の扉を開けて、仕切り板と本体の間に指を差し入れる。隣の引き出しへ抜けられるつくりになっていることがある。足元の化粧板の奥が空洞で、切り欠きから中に入れる家もある。入られたら最後、配管の間を抜けて、こちらが手を入れられない場所まで行く。

押入れとクローゼットは、戸そのものを見る。引き戸は、戸と戸の重なりに指が入る隙間があれば、前足をかけて開けられる。下のレールのところは特に隙間が残る。襖は軽いので、閉めたつもりで数センチ開いていることがある。開いた先が天袋まで続いているなら、そこはもう手の届かない場所だ。

一度入られると、呼んでも出てこない。来たばかりの猫は、名前を呼ばれて出てくるような関係になっていない。餌を置いても、人がいなくなってから食べる。見つかるのはたいてい、数時間後の物音か、翌朝になっても出てこないという気配のほうだ。

棚の上と、床を這う細いもの

高いところに置いた物は、猫が来る前に下ろす。「落ちても割れない物ならいい」ではない。猫は棚の縁に前足をかけて、体重をかけて、乗れるかどうかを試す。試すたびに棚が数ミリ動く。上の物は、猫が着地した弾みで落ちる。落ちた物が割れることより、落ちた物の上に猫が着地することのほうが問題だ。花瓶や鉢植えも同じで、猫は鉢の土を掘るし、鉢ごと落とす。

薄いテレビは、猫一匹の体重で手前に倒れる。地震の備えで固定している家でも、猫が毎日乗る前提で固定している家は少ない。本棚の上、冷蔵庫の上、突っ張り式の棚。乗られる前に、乗られても落ちない形にしておく。

コード類は、動かす理由が少し違う。感電の話としてではなく、遊び道具になるから動かす。猫は細い線を前足でちょいちょいと引き寄せて、転がす。充電ケーブルは特にそうなる。そして走るときに足に絡む。絡んだ猫は、パニックで部屋の中をぶつかりながら走る。その数秒で、さっき下ろしたはずの物がまた落ちる。

前日にやるのは、床を這っている線を壁沿いに上げること。コンセントから機器までのたるみを、床に落とさない。カーテンの紐やブラインドのコードのように輪になるものは、輪を切るか、結んで小さくする。

玄関とベランダ扉のルールは、前日の夜に決める

家族がいるなら、全員の前で決める。玄関は、開ける前に足元を見る。誰が先に出るか、ではない。開けた瞬間に猫がいるかいないか、だ。「いたら閉める」では遅い。ドアは開いた時点で隙間ができている。

ベランダ扉は、閉める前に床を見る。猫は足音を立てない。ベランダに出て、手すりに上がって、しばらくしてから戻ってくる。戻ってきた猫は、扉の前に立っている。

大事なのは、守る気があるかどうかでルールを決めないことだ。手が塞がっているときに守れる形になっているかで決める。買い物袋を両手に提げているとき、玄関を開ける前に袋を置けるか。そこまで決めておくと、だいたい守れる。守れないルールは、破れた日にいちばん高くつく。

夜、部屋の明かりをつけて、もう一度だけ網戸を押してみる。昼と違って、網が光って、枠の歪みが見える。手のひらを当てて、肩の重さを預ける。動かなければ、それでいい。

猫が来てから同じことをしようとすると、猫が乗ってくる。猫が邪魔をする。猫は、その隙間の意味をもう知っている。前日は、まだ猫がいない。だから全部できる。

猫の爪痕

執筆者について

猫の爪痕

猫と暮らす年月が長くなり、爪とぎの跡や換毛期の抜け毛が部屋の景色に溶け込んでしまった人たちです。多頭飼い、引っ越し、シニア猫との暮らしをそれぞれに経験しながら、猫種ごとの性格や手入れの重さを日々の暮らしの中で見てきました。

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