ワンルームで猫を迎えた初週、夜の寝床をどこに決めるか

目次
  1. 深夜二時、畳の上で音がする
  2. ワンルームで仕切れるのは、家具だけ
  3. 1LDKは、距離ができるぶん声が届く
  4. 戸建ては、閉じる場所を絞る
  5. ドアの決め方は、初日の夕方に家族で合わせる
  6. 寝る前の十五分だけ、こちらが動く
  7. 三日目から四日目に、いちばん揺れる
  8. それでも、間取りで無理なときは

初週の夜の寝床は、猫を迎えたその日の明るいうちに「猫がすでに選んでいる一角」と「寝室のドアを開けるか閉めるか」の二点だけ決めて、七日間そのまま動かさないことです。ワンルームなら、その一角とトイレ、水皿のあいだを家具で軽く仕切って夜のゾーンを作ります。1LDKなら猫の夜の一式をリビング側で完結させ、寝室側には置きません。戸建てなら、夜に閉めるドアを一箇所に絞ります。間取りが違っても、初日に決めて変えないという原則は同じです。

深夜二時、畳の上で音がする

六畳のワンルームで、布団を敷いたまま天井を見ている。流しのほうから、爪がフローリングを打つ音が三つ。それから畳に降りる、少し湿った足音。水皿に鼻先が当たる、金属の小さな音。しばらく止まって、また歩き出す。

目を開けると、昼間に猫が昼寝をしていた低い棚が目の前にあった。私はそこに毛布を一枚、四つ折りにして置いていた。白い影がその上に乗っている。夜中に歩き回ってはいるが、戻る場所はもう決まっている。私が決めることは、それを動かさないことだけだった。

猫を迎えた初週、猫は夜に落ち着かず、鳴いたり歩き回ったりする。慣れない部屋を確かめているのだと、そのとき思った。だからこちらができるのは、確かめる範囲を毎晩同じにしておくことになる。間取りが違えば、その範囲の作り方も変わる。

ワンルームで仕切れるのは、家具だけ

壁がないというのは、思っているより大きい。音も光も匂いも、全部同じ空間にある。だから夜のゾーンは、家具の高さと向きで作るしかない。

寝床は、猫が昼間に選んだ場所にする。低い棚の上、押入れの前、布団の脇。買ったベッドを置くのではなく、そこに毛布を畳んで足す。うちはそれで落ち着いた。トイレは寝床から斜め向かいに置き、あいだに低い本棚を挟んだ。同じ壁沿いに並べると近すぎる。水皿はトイレから離す。爪とぎは寝床のすぐ横。朝、起き抜けに研ぐ場所になる。

夜、照明を消したあと猫が歩き回っても、電気を付け直さない。声もかけない。目だけ開けて、音の位置を確かめる。狭い部屋なので、歩く範囲が日ごとに小さくなっていくのが見える。これはワンルームの利点だと思う。変化が手の届く範囲で起きる。

玄関と浴室のドアは、初日に閉めると決めた。開けっ放しにすると、夜中の行き先が増える。翌日から、そこへ向かうようになる。

1LDKは、距離ができるぶん声が届く

1LDKなら、猫の夜の一式をLDK側で完結させられる。寝床、トイレ、水、フード。寝室側には何も置かない。ここまでは簡単だ。

難しいのは、壁とドアがあるぶん、猫が「閉められた」と感じやすいこと。寝室のドアを閉めるなら初日から閉める。開けるなら七日間開けたまま。三日目に「今夜だけ」と開けると、四日目からドアの前が定位置になる。一度開いた時刻は覚えられる。開けるなら開けるで、布団の足元に毛布を一枚畳んでおく。乗ってくる前提で寝る。それも初日に決めてしまえばいい。

戸建ては、閉じる場所を絞る

戸建ては選択肢が多すぎる。二階の寝室、和室、押入れ、納戸。開き戸も引き戸もふすまもある。夜のあいだに猫がどこかへ入り込んで朝まで出てこない。逆に、家中を巡回して朝まで帰ってこない。どちらも起きる。

だから夜の拠点を一箇所だけ決めて、そこは閉めない。閉めるのは二箇所だけ、と決めた。人が夜中に台所へ立つときも、開けるドアは同じにする。一貫性はドアの数ではなく、人が通る順番のほうで作られる。

ドアの決め方は、初日の夕方に家族で合わせる

ここが一番抜けやすい。誰か一人が夜中に「かわいそうだから」と開けてしまうと、その夜で一週間が振り出しに戻る。次の晩から、同じ時刻に同じ場所で声がするようになる。

だから、まだ猫が部屋の隅にいるとき、初日の夕方に一度だけ話しておく。決めるのは、寝室のドアと、玄関と浴室のドア。それ以上は決めない。決めごとは少ないほうが守られる。

寝る前の十五分だけ、こちらが動く

寝る前に十分から十五分、遊ぶ。動くおもちゃでも紐でもいいが、最後は必ず手で捕まえられる形で終える。そのあと決まった時刻にフード。照明を落として、こちらは寝る。

夜中に起きて遊びに付き合うと、その時刻が猫の予定表に書き込まれる。付き合わない、も決めごとのうちだ。遊びと食事の時刻が固定されていると、夜の境界が猫の側にも見えやすい。

三日目から四日目に、いちばん揺れる

私はここで一度、寝床を寝室に運びそうになった。夜中に鳴くので、隣に置けば静かになる気がした。トイレの位置も変えたくなった。踏みとどまった理由は単純で、動かすと猫がまた部屋を測り直すからだ。

七日は動かさない、と決めておくと、三日目と四日目を越えやすい。この二晩がいちばん長い。

それでも、間取りで無理なときは

六畳に人が二人と猫一匹なら、トイレと寝床はどうしても近い。賃貸で壁に棚も付けられない。フローリングなら夜の足音が下の階に響く。全部をきれいに分けるのは無理だ。

そのときは、完全な分離をあきらめて、視線を切るだけにする。ラックを一つ置く。トイレの向きを変える。フローリングにはラグを一枚。それで十分なことが多い。毎晩同じ配置であることのほうが、距離の取り方より効く。

七日目の朝、水皿の音で目が覚める。夜中の足音は、もう数えるほどしかしていない。

猫の爪痕

執筆者について

猫の爪痕

猫と暮らす年月が長くなり、爪とぎの跡や換毛期の抜け毛が部屋の景色に溶け込んでしまった人たちです。多頭飼い、引っ越し、シニア猫との暮らしをそれぞれに経験しながら、猫種ごとの性格や手入れの重さを日々の暮らしの中で見てきました。

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