賃貸の申込書を出す前に管理会社へ確認するのは、猫が対象に含まれているか、頭数の上限と付帯条件、お金の性質、退去時の原状回復の決め方、日々のルールの5つです。契約条項の案や特約、承諾書のひな形など、書面で残る形で確認できればいちばん確かで、口頭しか取れないときは日付と担当者名を控えておきます。可否を最終的に決めるのは貸主ですが、取り次ぎ、条件の運用、退去時の査定に関わるのは管理会社の側です。だからまだ無料で引き返せる申込前の段階で、ここに聞くのがいちばん効きます。

私は今でも、申込書を書く前の晩にスマホのメモを開きます。画面いっぱいに質問を並べて、翌朝、内見でお世話になった不動産屋ではなく、募集図面のすみに小さく載っている管理会社の窓口にかける。「ペット可ですよ」と言われた言葉を疑っているわけではありません。ただ、あの一言は募集図面に印刷された記号で、契約の中身とは別物だということを、何度か痛い目を見て覚えたからです。猫を迎えてから越すたびに、この夜のメモは少しずつ育ってきました。
申込書を出す前でなければ意味がない
内見が終わると、流れは速い。申込書、申込金、審査、重要事項説明、契約。気づけば特約にサインしていて、あとから「猫は対象外でした」と言われる。これを避けるのに特別なことは要りません。順番をひとつ前倒しするだけで足ります。申込書より先に電話して、契約条項の写しを見せてもらえないかと頼む。これを嫌がらない物件は、ペットの扱いに慣れていることが多い、というのが私の実感です。
1. その「ペット」に猫が入っているか
「ペット可」と「猫可」は同じ言葉ではありません。小型犬のみ、という物件は本当に多い。逆に猫だけ可、という物件もあります。猫は抜け毛、爪とぎ、マーキングの匂い、夜の運動会と、犬とは違う角度で嫌がられるので、別枠で判断されていると考えたほうが安全です。
聞き方は「ペットは大丈夫ですか」ではいけません。「猫2匹で申し込みを考えています。規約上、猫は何頭まで可能でしょうか」と、頭数を先に出す。具体が出ると、相手も具体で返してきます。
犬向けの体重制限が、そのまま猫にかぶっていることもあります。「10kgまで」といった条項は猫にはほぼ無関係ですが、書面上は条件として残ります。そこを確認して外してもらえるかどうかも、管理会社の裁量と貸主の意向次第です。
2. 頭数の上限と、それに付いてくる条件
頭数は「何匹まで」だけでは足りません。「2匹まで」なのか、「2匹目からは追加の費用がかかる」なのか。「多頭飼育は不可」と書いてあって、実質1匹という物件もあります。
セットで聞きたいのが、避妊去勢の証明、ワクチンの証明、そしてペット保険の加入義務です。どれも契約前には用意できない書類なので、いつまでに何を出せばいいのかを先に聞いておかないと、審査の途中で止まります。うちはこの「保険に入ってください」の一言を聞き漏らしかけて、契約直前にバタバタしました。保険の有無そのものより、条件がいくつ重なっているかを見ておくほうが大事です。
お金は金額より「性質」を聞く
3. 敷金・クリーニング・毎月の費用
敷金の積み増し、退去時のクリーニング費用、毎月のペット費用。この3つは物件ごとに違うので、金額はここには書きません。代わりに聞いてほしいのは、そのお金の性質です。
積み増した敷金は、退去時に返ってくるのか、それとも償却なのか。返ってくる前提でいたら戻らなかった、というのはよくある話です。クリーニング費用も、契約時に払うのか、退去時に引かれるのかで家計の組み方が変わります。毎月の費用は、ペット共益費という名前で少しずつ乗っていることが多い。「これは何のためのお金ですか」と聞くのは失礼ではありません。答えられない担当者は、たぶんその物件のペット運用を分かっていません。
4. 退去時の原状回復をどう決めるか
猫と暮らすと、畳、襖、壁紙の下端、柱の角がやられます。爪とぎは柱でやってくれるとは限らず、和室の畳の縁を狙うこともあります。だから退去時のことを、入居前に聞いておきます。
聞くのは金額ではなく、決め方です。「退去時の査定は誰が行いますか」「立会いはありますか」「結果は書面で残りますか」。原状回復の考え方には国のガイドラインがあり、通常の使用による損耗と、借主が負担する損傷の線引きの目安になっています。その目安を前提に、ペットによる損傷をどこまで借主負担とするのか、特約に書かれているかを確認します。立会いと記録があれば、あとから言い分が食い違ったときに話を戻せます。
日々のルールは、書面に書かれていない
5. バルコニー、網戸、共用部
ここは生活の解像度の話です。バルコニーに転落防止のネットや柵を付けられるか。付けるのに穴をあける工事が必要な場合、それは可か。網戸は猫が開けるし、破ります。張り替えを自分でやるのは可か、原状回復でまとめて請求されるのか。共用部に猫を出さない、来客時に玄関を開けない、夜の鳴き声をどう扱うか。どれも当たり前に見えて、書面には書かれていないことが多い部分です。
ベランダの扱いは特に聞いておきます。網戸を閉めていても、猫は前足で引っかけて開けます。開けられないようにロックを付けるのは入居後の工夫ですが、そもそもベランダに猫を出してよいのかどうかで、その工夫が要るかどうかが変わります。
答えが曖昧だったときの戻し方
電話で「たぶん大丈夫だと思います」と言われたら、そこで安心してはいけません。その担当者は、貸主に聞いていないだけかもしれません。次のように戻します。
「規約の該当部分の写しをいただけますか」
「猫の件の窓口はどなたになりますか」
「確認にお時間をいただく場合、いつまでに答えをいただけますか」
3つ目が一番効きます。貸主の確認には数日かかることがあり、その間に申込金や他の申込者との兼ね合いが出てきます。期限を決めておけば、こちらも動けます。
そしてもうひとつ、さりげなく聞いてみてほしいのが「この棟でペットと暮らしている世帯はどのくらいありますか」という質問です。個人情報なので、はっきりした数字は返ってきません。それでも、即答で「何世帯かいます」と返ってくる物件と、少し詰まって「規約上は可能です」としか言わない物件では、ルールの実際の運用が違う気がします。規約は同じでも、運用しているのは人だからです。
申込前の一本の電話
質問を並べると大げさに見えますが、電話なら10分から15分です。順番は、猫が対象か、頭数と条件、お金の性質、原状回復、毎日のルール。そして最後に書面と窓口。この順番なら、途中で話がそれても戻ってこられます。
全部に明確な答えが返ってくる物件ばかりではありません。むしろ、曖昧なまま進んで、契約直前で条件が増えることのほうが多い。それでも、申込書を出す前に聞いておけば、曖昧な部分がどこなのかを把握した状態で進められます。これが、あとで「聞いていなかった」と後悔する回数を、確実に減らしてくれます。猫と暮らす引っ越しは、物件の良し悪しより、聞く順番で決まる部分が大きいと、何度か越してきた今は思います。