「ペット可」でも猫が飼えるとは限らない?賃貸表記の違いを確認する

目次
  1. 三つの表記を、同じ強さの言葉だと思わない
  2. 掲載と契約のあいだには、段差がある
  3. 申し込みの前に、書面でペット条項をもらう
  4. 表記は入口で、契約書が本体

「ペット可」という表記は、猫が飼えるという保証ではない。賃貸募集で使われる「ペット可」「ペット相談可」「ペット不可」は、いずれも募集時の要約ラベルであって、実際に効力を持つのは賃貸借契約書のペット条項と、建物の管理規約・使用細則のほうだ。同じ「ペット可」でも、猫の頭数、犬か猫か、体重の上限、敷金の積み増しの有無は物件ごとに別で、しかもその中身は契約の直前に出てくる。だから最初に見るべきは検索結果のラベルではなく、契約書に書かれた一文になる。

「ペット可」でも猫が飼えるとは限らない?賃貸表記の違いを確認する

私がこの順番を体で覚えたのは、内見のあとに渡された書類を、ダイニングテーブルに広げたときだった。スマホの中では「ペット可」の三文字だったものが、紙の上では特約条項として六行に伸びていた。細かい数字は物件ごとに違うが、私がそのとき読んだのは、猫は二匹まで、敷金はひと月分を積み増し、退去時の消臭とクリーニングは借主負担、という三つだった。あの物件は、飼えるか飼えないかの話をしていたのではなく、飼うとしてどの条件で飼うのかという話をしていた。あなたが同じ場面に立ったら、まずその数行を探してほしい。ページの真ん中あたり、太字でもなんでもない場所にある。

それから私の中で、「ペット可」という言葉は表紙になり、特約条項が本文になった。表紙だけを見て申し込むと、本文でつまずく。順番を逆にすれば、つまずく回数はぐっと減る。

三つの表記を、同じ強さの言葉だと思わない

物件サイトの検索条件で「ペット可」にチェックを入れると、「ペット相談可」の物件は出てこないことが多い。逆も同じで、この二つは別の棚に置かれている。似た顔をした別物だと考えたほうがいい。

「ペット可」は、無条件という意味ではない

募集の時点で、貸主がペットの飼育を前提にしていると読める表記だ。ただし「条件なし」とはどこにも書いていない。実際に後ろへ付いてくるのは、犬のみ、猫のみ、小型犬のみ、一匹まで、体重○キロまで、といった限定だ。「ペット可」なのに猫は不可、という物件は珍しくない。小型犬だけを想定して書かれた一行で、猫はその想定の外にいる。逆に「猫のみ可」という表記もあって、これは猫のほうが壁や床を傷つけにくいと考えられていることが多い。猫の爪とぎの癖を知っている身としては、その前提がどこまで本当かは別の話だと思っている。

「ペット相談可」は、まだ誰も承諾していない

これは「貸主が前向きに検討する余地がある」という意味で、事前に承諾しているという意味ではない。相談の二文字が守っているのは、貸主側の逃げ道でもある。内見を申し込むと、担当者が「オーナーに確認します」と言い、数日後に「今回は難しいです」と返ってくる。よくある流れだ。逆に可能と返ってきても、その時点ではまだ口頭でしかない。

「ペット不可」は、どこから動かすかを最初に聞く

原則は不可。ただし、規約そのものが動物を禁じているのか、その貸主が個人的に避けているだけなのかで、重さが違う。この区別を最初に聞いておくと、そのあとの時間の使い方が変わる。動かない壁に何週間も向き合うより、同じ条件の別の部屋を探したほうが早い。

掲載と契約のあいだには、段差がある

図面の備考欄は、部屋が空くたびに使い回されることがある。前の入居者のときに書かれた一行がそのまま残っていて、実際の規約はそのあとに改定されている、ということが起こる。表記は写真のように固定された事実ではなく、更新が遅れることのある要約だと思っておいたほうがいい。

同じ建物でも、窓口が変われば答えが変わる

建物全体を管理している会社と、その部屋を貸し出している会社が違うことがある。同じ建物の同じタイプの部屋でも、管理会社ごとにペットの扱いの内規が違う。だから「隣の部屋では猫を飼っていると聞いた」は根拠にならない。確認する先は掲示板でもレビューでもなく、その部屋を扱っている管理会社の担当者だ。聞くたびに答えが違うなら、その時点で一度立ち止まったほうがいい。

表記は動く

入居者が入れ替わったとき、規約が改定されたとき、オーナーの意向が変わったとき、表記は動く。去年「不可」だった部屋が今年は「可」になっていることも、その逆もある。一年前のブログやSNSの体験談は参考にはなるが、あなたの部屋の条件ではない。私も以前、他人の「この物件で猫を飼っています」という書き込みを頼りに問い合わせて、規約が変わったあとだと聞かされたことがある。

申し込みの前に、書面でペット条項をもらう

ここが実際の分かれ目になる。私が今やっている順番はこうだ。

  • 内見の申し込みの前に、「ペット条項を確認したい」と一言添える
  • 内見のときに、頭数と種類を数字で伝える。「猫が二匹います」まで言う
  • 申込書を書く前に、特約条項の案を書面かPDFで送ってもらう
  • 重要事項説明のとき、書面と口頭が食い違っていないか読み合わせる

口頭の「大丈夫です」は契約書には残らない。逆に、契約書に書いてあれば担当者が変わっても残る。もし「契約前には全文を出せない」と言われたら、ペットに関する特約の案の部分だけでも先に見せてもらえないか頼んでみる。ここで渋られるかどうかは物件そのものの情報ではないが、そのあとの付き合い方を考える材料にはなる。

確認するのは、契約書だけではない

書類は二枚ある。一枚は貸主とのあいだに交わす賃貸借契約書。もう一枚は建物全体の管理規約と使用細則だ。貸主が猫を認めていても、管理規約のほうに動物の飼育を禁じる一文があれば、そこは通らない。管理規約は契約書に添付されないこともあるので、見たいと申し出る価値がある。

そして、この二枚のさらに外側に、管理会社の運用の層がある。同じ規約でも、現場の判断で小型犬だけを通していたり、逆に「猫は相談されたことがない」という理由で止めていたりする。書面の話と現場の話は別々に聞いておく。両方が同じ方向を向いていないと、入居してから揉める。

聞くべきことは、「飼えるかどうか」ではない

「飼えますか」と聞くと、返ってくるのは「たぶん」か「たぶん大丈夫です」になる。そうではなく、条件を分解して聞く。

  • 種類(猫か、犬か、両方か)
  • 頭数(一匹か、二匹か)
  • 去勢や避妊、ワクチンの証明が必要か
  • ペット専用の敷金が何か月分か
  • 退去時の原状回復の範囲(消臭、壁紙、床)
  • 覚書や承諾書の提出が必要か

この六つをまとめて最初に聞くと、返ってくる答えの精度が変わる。特に効くのは敷金と原状回復で、家賃の表には出てこないお金がそこに隠れている。猫の頭数と同じくらい、退去のときの一括の支払いが家計に響く。爪とぎの跡で壁紙を一面張り替えるのか、部分補修で済むのかで、金額はかなり違ってくる。

表記は入口で、契約書が本体

ここまで書いてきたのは、特定の物件についての判断ではない。一般的な手順として、掲載の表記と契約書の条項を分けて見る、という話だ。実際にどうなるかは、その契約書の文言と、貸主と管理会社の判断で決まる。同じ「ペット可」の三文字を見ても、その意味は部屋ごとに違う。

だから、あなたが今スマホで物件を見ているなら、内見の予約ボタンを押す前に、その「ペット可」が何を指しているのかを一行だけ確認しておいてほしい。返ってきた答えが「猫二匹まで、敷金ひと月、消臭は借主負担」のような具体的な数字だったら、その物件は条件を隠していない。逆に「大丈夫ですよ」しか返ってこなかったら、その先の書面で確かめる。私はこの一手間を、引っ越しのたびに払っている。猫はその間、キャリーバッグの中で鳴いている。

猫の爪痕

執筆者について

猫の爪痕

猫と暮らす年月が長くなり、爪とぎの跡や換毛期の抜け毛が部屋の景色に溶け込んでしまった人たちです。多頭飼い、引っ越し、シニア猫との暮らしをそれぞれに経験しながら、猫種ごとの性格や手入れの重さを日々の暮らしの中で見てきました。

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